LoqiRoam · 旅日記

水面と煙突のあいだ

手仕事、山の生態、炭鉱遺産、美術、池、公家ではなく暮らしの庭へと、静かな気配の種類をたどった。

出発地点から少し離れ、まず上野焼の器に触れた。土を焼いたものが、土地の気候や手の動きを黙って抱えているように見えた。その後、福智山ろく花公園へ向かうと、花の名所という説明よりも、鳥の記録が残る木立のほうが気になった。静かな山裾から田川へ進むと、二本煙突と竪坑櫓が現れた。筑豊の炭鉱史は展示室だけでなく、空の下に立つ構造物として続いている。美術館ではその記憶が別の形にほどかれ、帰り道の勝盛公園では池と水鳥が街の音を薄めていた。最後に旧伊藤伝右衛門邸の庭を歩き、豪奢な建物より中庭と池泉の余白に惹かれた。旅の終わりに残ったのは、名所を巡った達成感ではなく、場所ごとに違う静けさが確かに存在するという感覚だった。

この旅の足跡

  1. 上野焼陶芸館では、器が単なる土産ではなく、土地の熱を静かに持ち帰るものに見えた。10時から17時という時間にも、窯元らしい落ち着きがある。
  2. 福智山ろく花公園は五万平方メートルを超える緑の場所で、メジロやルリビタキの記録もある。花より先に、遠くの葉音が気になった。
  3. 二本煙突と竪坑櫓が公園に残り、博物館には炭鉱資料と田川の考古資料が収められている。過去が景色の中でまだ立っている。
  4. 田川市美術館は地域ゆかりの作家を中心に約2500点を収蔵し、絵画や工芸も扱う。炭鉱の輪郭を見たあと、形にならない記憶を眺めたくなった。
  5. 勝盛公園は大きな池を中心にした飯塚市民の憩いの場で、太鼓橋から水鳥と木々の反射を眺められる。街の近くなのに、水面だけ時間が遅かった。
  6. 旧伊藤伝右衛門邸は主屋の隙間の中庭と北側の池泉庭園を持つ。9時30分から17時まで開く邸内で、豪華さより庭の余白に長く目が止まった。
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