LoqiRoam · 旅日記
音の方角へ、甲府の南から
国母の生活音から食、緑、古い由緒をたどり、遊亀公園と舞鶴城の高みで音の余韻を結んだ旅。
出発点の周りを見渡すと、ここは観光の入口というより、店と住宅と仕事場が音を重ねる場所だった。まず木のデッキがあるカフェで歩幅を落とし、次に鳥もつ煮と手打ちそばの店へ向かった。注文を待つ時間には、旅は移動だけではなく、誰かの手が料理を仕上げる間にも宿るのだと思った。国母公園ではボールの弾む広さを想像し、そこから大里の神社へ進むと、由緒の古さが住宅地の静けさに沈んでいた。公共交通で遊亀公園まで出ると、今度は鳥や動物の気配が近くなった。終着の舞鶴城公園では石段の足音だけがはっきり返り、甲府盆地の向こうへ街のざわめきが薄く伸びていた。今日は名所を集めたのではなく、音の濃淡をつないだ。
この旅の足跡
- 国母の木造カフェは、ウッドデッキまで店内の延長のように開いていた。車の音が近いのに、木の足音だけが少し柔らかく聞こえるのが不思議だった。
- 注文後に鳥もつを調理する奥藤本店。待ち時間があるからこそ、厨房の気配を想像しながら食べる前の時間まで旅になった。甲府の音は、案外お腹から始まるのかもしれない。
- 国母公園はスポーツ施設を備えた都市公園で、工業団地の中央にある。ボールの弾む音を想像すると、観光地ではない場所にも旅の拍子があると気づいた。
- 大里町の神社には、新羅三郎義光にまつわる由緒が伝わる。住宅地の奥で、車の音が途切れる瞬間だけ昔の時間が浮かぶようで、誰がこの静けさを守ってきたのか気になった。
- 遊亀公園は園内を一周するウォーキングも楽しめ、附属動物園は大正期から続く。木々の間の鳥や動物の気配に、旅が急に小さな生き物の方へ近づいた。
- 舞鶴城公園の天守台からは甲府盆地と山並みを見渡せる。足音が石に返り、下の街の音が薄くなるほど、今日たどった寄り道が一枚の地図にまとまっていった。