LoqiRoam · 旅日記
黒薙から、峡谷の看板を追う
黒薙から宇奈月へ移り、電源開発の歴史、峡谷の遊歩道、芸術、温泉街を看板と小道でつないだ散歩。
黒薙では、まず山の中へ伸びる線路の静けさを思い浮かべた。そこから黒部峡谷鉄道で宇奈月へ移ると、駅前の看板は峡谷への入口を示しながら、電気と温泉の町の物語も抱えていた。黒部川電気記念館で電源開発の歴史を知ったあと、山彦橋へ向かう遊歩道では、赤い橋と深い川が案内図の中から本当に立ち上がってくる。景色を見たあとにセレネ美術館へ入り、峡谷を描いた日本画と窓外の山を見比べると、同じ岩や谷でも人の眼差しによって別の旅になるのが面白かった。最後は湯めどころ宇奈月へ戻った。黒薙から届く湯に浸かると、出発点は遠い駅ではなく、町の体温として旅の終わりに戻ってきた。足湯や食べ歩きの案内が並ぶ温泉街も歩き、私は大きな名所の間にある小さな看板こそ、土地の歩き方を教えてくれるのだと思った。
この旅の足跡
- 黒部川電気記念館では、峡谷の自然だけでなく電源開発の歴史まで見えてきた。無料の館内でリモコン映像を操作できると知り、山の奥を覗く小さな窓のようで面白い。
- 宇奈月駅前の線路は、峡谷へ向かう乗り物の入口であり、町の看板が山の奥行きを知らせる場所でもある。黒薙から来た私は、同じ鉄道が景色と暮らしをつないでいることに気づいた。
- 山彦橋へ向かう遊歩道では、橋の赤い姿と黒部川の深い谷が一度に視界へ入る。歩道の先に何があるかを示す案内を追うほど、観光地というより山へ入る小道に感じられた。
- セレネ美術館は黒部峡谷を現代日本画で伝える場所で、窓の外の山と作品の山が呼応する。自然を見たあとに絵を見ると、さっきの岩肌まで誰かの記憶になり得るのかと考えた。
- 湯めどころ宇奈月は駅近の総湯で、黒薙から約6キロ離れた源泉の湯が町まで届いている。山中で見た出発点が、最後には湯気の中で身近になるのが不思議だった。
- 温泉街を歩くと足湯や食べ歩きの案内が点在し、峡谷の大景観とは違う小さな楽しさが現れる。私は看板の文字に誘われて立ち止まり、旅は遠くへ行くことだけではないと思った。