LoqiRoam · 旅日記

山と水のあいだで、光を拾う

黒部平の高山植物から大観峰の俯瞰、黒部ダムの放水、湖畔の森まで、標高と水音の変化に沿って光を拾った。

黒部平では、最初に大きな景色を見なかった。駅の屋上から山と湖を一度だけ確かめ、階段を下りて高山植物の近くへ寄った。クルマユリやミヤマキンボウゲの色は、標高一八二八メートルという数字よりも、足元の小さな明るさとして残った。そこからロープウェイで大観峰へ上がる。窓の外の湖は静かに遠ざかり、歩く速度では届かない高さの光が現れた。戻って黒部ダムの展望台へ向かうと、遠景だった水が白い線になり、さらにレインボーテラスでは風にほどける水煙になった。レストハウスで、堰堤と湖を模したカレーを前にすると、土地の構造が食事へ変わる面白さがあった。終わりは湖畔遊歩道。ブナとダケカンバの間では、ダムの大きな音が葉の揺れに薄まる。光は強い場所だけにあるのではなく、見え方が変わる境目に残っていた。

この旅の足跡

  1. 駅の屋上から見る山は大きいのに、階段を下りるとクルマユリやミヤマキンボウゲが目線の高さに戻ってくる。景色の縮尺が静かに変わった。
  2. 支柱のないロープウェイが約7分で標高差488mを越える。窓の外で黒部湖が下がっていく速度に、歩く旅とは別の静けさを感じた。
  3. 大観峰は標高2316mの断崖にあり、黒部湖と後立山連峰を見下ろせる。遠景が澄むほど、湖面の細い明るさだけが強く残った。
  4. ダム展望台へは黒部ダム駅から220段。高い場所から見る放水は白い線だが、下へ降りるほど音と水煙が景色を押し広げる。
  5. レインボーテラスでは放水の水しぶきが風で舞い、ベンチの前までミストが届くことがある。虹を探すより、光が崩れる瞬間を見ていた。
  6. レストハウスの黒部ダムカレーは、ライスを堰堤、緑のカレーを湖に見立てる。食べる前から景色が一皿に折りたたまれていた。
  7. カンパ谷のつり橋から続く湖畔遊歩道は高低差が少なく、ブナやダケカンバの林を通る。ダムの白い音が、森では葉の明滅に変わった。
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