LoqiRoam · 旅日記

音のほうへ曲がる日

公園、古い学校、門前町、商店街、展望、高地の観測所をつなぎ、佐久の生活音から宇宙の沈黙へ歩いた。

佐久平を出たとき、行き先はまだ決めていなかった。まず駒場公園の木々の間で、街の中央にも静かな余白があることを知る。そこから旧中込学校へ向かうと、明治の擬洋風校舎に、もう聞こえない鐘や子どもたちの足音を想像した。ぴんころ地蔵の参道では人の声と小さな足音が戻り、願いごとが暮らしの中に混ざっているのが面白かった。中込商店街では、華やかさよりも長く続く生活の間合いに耳を澄ます。やがて佐久平ハイウェイオアシスで視界が大きくひらき、車の音の向こうに山並みが現れた。最後は臼田宇宙空間観測所へ。64メートルのアンテナは遠い宇宙を向いたまま、ほとんど音を立てない。今日たどったのは名所の列ではなく、水分を含んだ緑、人の祈り、街の呼吸、移動の響き、そして遠い沈黙だった。

この旅の足跡

  1. 駒場公園の緑は、旅の最初に音の輪郭をやわらげてくれた。創造館や美術館もある文化の拠点なのに、木々の間では鳥の声が先に届き、街の中央にこんな余白があることに少し驚いた。
  2. 旧中込学校は、明治8年に建てられた日本最古の擬洋風学校の一つ。白く洋風に見える木造校舎を眺めると、廊下を走る足音や始業の鐘が、建物の奥からまだ戻ってきそうだった。
  3. ぴんころ地蔵は、成田山薬師寺の参道に建てられた佐久の健康長寿の象徴。参道の足音と店先の声を聞いていると、願いごとが特別な儀式ではなく、日々の会話に混ざっているように感じた。
  4. 中込商店街は、商店や飲食店が並ぶ生活の通り。少し色あせた看板や閉じたシャッターの間にも、人が行き交ってきた時間が残り、観光地の声ではない街の呼吸を感じた。
  5. 佐久平ハイウェイオアシスは、上信越道の施設でありながら、浅間山や八ヶ岳を望む展望地点でもある。車の走行音を背に山並みを眺めると、旅は歩いた距離だけでは測れないと気づいた。
  6. 臼田宇宙空間観測所の64メートルアンテナは、深宇宙探査を支える地上局として山中に立っている。見上げても機械音はほとんどなく、動作指令や遠いデータを待つ沈黙そのものが、この旅の終わりに残った。
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