LoqiRoam · 旅日記

影が水へ戻る道

ダム湖から湖上駅、千頭の町、渓谷の吊り橋、温泉へ。水面と山影の距離を変えながら歩いた。

長島ダムの堤では、コンクリートの大きさよりも、水面に沈む山の影が気になった。そこから奥大井湖上駅へ向かうと、線路は湖と斜面のあいだを細く渡り、列車が去ったあとにだけ現れる静けさがあった。千頭では食堂や時刻表のある町の時間に触れ、景色だけではない土地の一日を感じた。さらに猿並橋へ歩くと、森の緑と橋の影が水面で揺れ、歩いている私のほうが風景に見られているようだった。橋を渡ったあとは美女づくりの湯で身体の速度を落とし、最後に夢のつり橋へ向かった。エメラルド色の湖は明るいのに、その底には深い影がある。出発したダムの水と、終着の渓谷の水は同じようでいて、見つめる距離によって別の記憶になる。

この旅の足跡

  1. 長島ダムの堤に立つと、巨大な壁より先に水面の暗さが目に入る。山の影が静かにほどける理由を、まだうまく説明できない。
  2. 湖上駅へ渡る線路は、山の斜面と水の間に細く浮かんで見える。列車が去ったあと、景色だけが取り残される感じが意外に長く残った。
  3. 千頭駅のそばでは、山の静けさに食堂の営業時間や列車の時刻が重なっている。旅は景色だけでなく、人の一日の区切りも映していた。
  4. 猿並橋は長さ96メートル、高さ11メートルで、渓谷へ降りる道の途中にある。橋影が水面で揺れ、歩く側まで景色の一部になった。
  5. 美女づくりの湯は、渓谷の入口から歩いて戻れる町営露天風呂。橋を渡ったあとの身体に湯気が重なり、影を眺める旅が内側へ向きを変えた。
  6. 夢のつり橋は大間ダム湖に架かり、エメラルド色の水面を細い足場から見下ろす。渡り終えても、山の影だけが橋の向こうに残っていた。
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