LoqiRoam · 旅日記

町の艶、湧き水、楠の木陰

藤白の楠、黒江の漆器町、名水と喫茶店をつなぎ、土地の手触りを三つ集めた旅。

甘露寺前を出発して海南へ向かうと、最初に迎えてくれたのは藤白神社の大きな楠だった。熊野詣の入口として語られる場所で、木陰に立つだけで移動の気分が少し静まる。そこから黒江へ歩くと、家や仕事場が斜めに並ぶ独特の町並みが現れた。道を歩いているのに、昔の職人の配置をたどっているようでおもしろい。うるわし館では紀州漆器の艶を眺め、黒江ぬりもの館では古い職人の家が食事や甘味の休憩所になっている意外さに出会った。最後は中言神社の黒牛の水へ寄り、町の産業を支えた水の気配を拾う。海南駅前の喫茶店で一息つくころには、今日集めた三つの発見――楠の木陰、漆器の艶、湧き水の静けさ――が、別々ではなく一つの町の手触りとして残っていた。

この旅の足跡

  1. 藤白神社の境内には千年を越える楠があり、熊野詣の入口らしい格式も残る。大木の下で、旅の始まりが急に深くなった気がした。
  2. 黒江は漆器職人の家や仕事場がのこぎり歯のように並ぶ町。斜めの家並みを眺めると、道そのものが昔の工房の配置図に見えてくる。
  3. うるわし館では紀州漆器の展示や即売、資料室まで見られる。黒と朱の艶を前にすると、町歩きで見た格子の影まで器の模様に思えてきた。
  4. 黒江ぬりもの館は漆職人の古い家を使った場所で、漆器に盛る食事や黒江プリンの話も見つかる。古い家が甘い休憩所になる意外さが楽しい。
  5. 中言神社では境内に黒牛の水が湧くという。漆器の町に名水の記憶まで重なり、さっきの黒牛茶屋の名も少し身近に感じられた。
  6. 海南駅前のヴァンサンカンは昔ながらの喫茶店で、朝から夕方まで開いている。旅の最後にレンガの店で甘いものを想像すると、町の余韻が丸くなる。
地図と足跡で読む