LoqiRoam · 旅日記
川を渡らない渡し舟
武蔵新田から神社、渡しの記憶、公園、文化施設、ケヤキ並木、多摩川台公園へ音の距離を変えて歩く旅。
武蔵新田を出ると、最初に聞こえたのは駅の機械音より、境内の大きなケヤキが揺れる音だった。そこから矢口の渡し跡へ向かうと、かつて人を向こう岸へ運んだ場所が、いまは水面と記憶だけを残している。少し歩いた下丸子公園では、その渡しが木組みの舟として景観に戻されていた。過去が消えたのではなく、別の音の形に置き換わっているようだった。大田区民プラザで落語やジャズの気配を想像し、ケヤキ並木の道へ出る。最後は多摩川台公園の古墳と植物の間で、川、葉、電車の音を遠くから重ねた。今日はどこかへ渡ったというより、音の距離を少しずつ変えながら歩いた旅だった。
この旅の足跡
- 境内に樹齢700年超と伝わるケヤキがあり、駅前なのに音の輪郭が急に丸くなる。枝のざわめきは、誰に向けた合図なのだろう。
- かつて多摩川を渡る最後の渡船場だった場所に、いまは案内板だけが残る。水面を見ていると、船頭の声まで風に混じりそうで不思議だ。
- 下丸子公園には矢口の渡しを再現した木組みの渡し場と小さな舟がある。池の水音と遊具の声が同じ景色に重なるのが面白い。
- 駅前の大田区民プラザは9時から22時まで開館し、落語やジャズの鑑賞会も開かれてきた。今日は扉の向こうの響きを想像して休む。
- 大田区民プラザ付近からガス橋まで、ケヤキ並木が続く。木陰では車の音が少し低く聞こえ、道そのものが長い楽器のように感じられた。
- 多摩川台公園には亀甲山古墳や宝莱山古墳、水生植物園、見晴台がある。高台で聞く川と電車の遠音は、旅の終わりを急がせない。