LoqiRoam · 旅日記
曲がり角の先で、川が広がった
西麻植八幡神社から名水、城山、潜水橋を経て、善入寺島の広い耕作地へ抜ける旅。
西麻植から歩き始めて、最初の曲がり角は西麻植八幡神社にした。藍商の寄進を伝える陶製狛犬と、踏むと音がするという太鼓橋。土地の歴史が、立派な説明板ではなく、足元の小さな仕掛けとして残っているのが面白かった。そこから堤防の下へ折れ、江川の湧水で一度立ち止まる。夏冬で水温が大きく変わる名水だという話は、地図よりも身体に残る。川島城の坂では吉野川を見下ろし、万葉植物園では城跡の裏側に季節の細部を見つけた。最後に川島潜水橋へ出ると、欄干のない細い橋と大河の距離が妙に近い。渡った善入寺島は、かつて人で満ちていたのに、今は耕作地と風だけが広がる。寄り道ばかりだったが、終わってみれば、町から水へ、水から空へ、ちゃんと一本の旅になっていた。
この旅の足跡
- 境内に入ると、1834年の備前焼の陶製狛犬が迎える。太鼓橋を踏むと「キャン」と鳴るという話まであり、静かな社なのに少し茶目っ気がある。
- 堤防の下から湧く水は全国名水百選。夏は約10度、冬は20度以上という不思議な温度差で、立ち止まる理由がちゃんとある。
- 川島城は吉野川を見下ろす標高約40メートルの城山にあり、模擬天守と史跡公園が残る。坂を上がると、川の広さが急に地図らしく見えてくる。
- 城山の万葉植物園には、万葉集に詠まれた植物のうち約130種が集められ、歌を読みながら歩ける。城跡の裏で、急に季節の声が細かくなる。
- 川島潜水橋は幅約3メートルで、増水時には水中に沈む構造。欄干のない橋を歩くと、吉野川が近すぎて、少しだけ背筋が正しくなる。
- 善入寺島は約500ヘクタールの大きな川中島で、かつて約500戸・3000人が暮らした。今は広い耕作地が続き、無人の島なのに人の記憶だけが濃い。