LoqiRoam · 旅日記
鬼無の町で、三つの枝を拾う
盆栽の産地、老舗うどん、桃太郎伝説の地名をつなぎ、鬼無の日常と物語の距離を歩いて確かめた。
鬼無に着いたときは、駅の座標しか知らなかった。西へ歩くと、盆栽の町は想像よりずっと静かで、鉢の中に山や風の形が縮められていた。市場の気配を感じる場所を抜け、昼は長い歴史を持つうどん店へ。古い部屋と麺の湯気で、旅が急に生活の速度になる。そのあと桃太郎神社へ向かうと、昔話は一つの社に収まらず、雉ヶ谷や弦打や勝賀山という周囲の地名へ広がっていた。小さな鬼ヶ塚では、伝説の大きさより、暮らしの隙間に残る小ささが印象に残った。最後に駅へ戻る。今日は盆栽、うどん、地名という三本の枝を拾ったけれど、帰り道にはまだ名前のない芽もいくつか残っている。
この旅の足跡
- 一万鉢規模の松柏や雑木が並ぶ「高松盆栽の郷」。小さな鉢なのに、幹の曲がり方だけで景色が立ち上がるのが不思議だった。
- 鬼無植木盆栽センターは、季節と開催日が合えば市場になる場所。今日は市の気配を想像しながら、一本の松が商品であり生活でもある町の近さに驚いた。
- 120年の歴史を持つヨコクラうどん。古い和室や個性的な装飾の中で食べる一杯は、麺より先に店の時間を味わわせてくれそうだ。
- 桃太郎神社には、鬼無の雉ヶ谷や弦打、勝賀山など周辺の地名まで物語に組み込まれている。神社を見ているのに、地図全体が昔話になる。
- 鬼ヶ塚は、華やかな神社の物語より小さく、だからこそ伝承が暮らしの隙間に置かれている感じがする。鬼は退治されたのか、地名だけが今も歩いているのか。
- 鬼無駅は桃太郎の副駅名を持つ予讃線の駅。出発時にはただの座標だった場所が、盆栽とうどんと伝承を束ねる小さな編集室に変わった。