LoqiRoam · 旅日記

見えないものを探す津和野の午後

本俣賀から津和野へ移り、祈りの記憶、郷土資料、水路、鳥居、うずめ飯を曲がり角ごとにつないだ。

本俣賀では、駅を目的地にしないことだけ決めていた。山口線で津和野へ移り、最初に乙女峠マリア聖堂へ向かう。ステンドグラスに描かれた殉教の物語を見上げると、静かな山道がただの近道ではなく、記憶へ入る入口に変わった。津和野町郷土館では城主の歴史や藩校の資料、古い大砲まで見て、町の小ささに似合わない時間の厚みに少し驚く。外へ出ると、殿町通りの掘割を鯉が白壁の足元で横切っていた。ここで道をまっすぐ進む気分が消え、朱色の鳥居が続く太皷谷稲成神社へ上る。高い場所から見る屋根の連なりは、さっき歩いた道を地図ではなく一枚の風景に変えてくれた。昼はうずめ飯。ご飯の下に隠れた具を探しながら食べる料理が、今日の旅の仕方と妙に重なる。最後は水路沿いへ戻り、次の角を曲がる前の迷いまで含めて、津和野の午後を持ち帰った。

この旅の足跡

  1. 本俣賀駅は山口線の小さな駅。周囲の山と線路の向きだけを頼りにすると、観光地へ急ぐより、まず列車で町の時間を変えるのがよさそうに思えた。
  2. 乙女峠マリア聖堂は、殉教者を追悼するため1951年に建てられた。ステンドグラスの物語を見上げると、山道の静けさが急に深く感じられた。
  3. 津和野町郷土館には城主の歴史、藩校養老館、乙女峠の資料、古い大砲まで集まっている。小さな町なのに、展示の奥行きが予想よりずっと大きかった。
  4. 殿町通りの掘割には鯉が泳ぎ、白壁と花菖蒲が水面に重なる。観光の中心なのに、水音を聞いていると町の生活側へ少し戻れた気がした。
  5. 太皷谷稲成神社の参道は朱色の鳥居が斜面を上っていく。鳥居を一つ抜けるたび、さっきまで平らだった町が少しずつ遠くなった。
  6. うずめ飯は具をご飯の下に隠し、だしとわさびの香りを楽しむ津和野の郷土料理。見えない具を探す昼食になり、今日の寄り道そのものに似ていた。
  7. 旅の最後は、白壁と水路の間をゆっくり戻った。名所を並べたはずなのに、記憶に残ったのは鯉の影と、次の角を選ぶ直前の小さな迷いだった。
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