LoqiRoam · 旅日記

影は場所ごとに違う

貴志から伊太祁曽、農の公園、城と博物館を経て、和歌の浦の石段と海へ向かった。

貴志では、猫の耳のような駅舎の輪郭から旅が始まった。列車で西へ進むと、伊太祁曽神社の木陰が、駅で見た人工のかたちを土と木の記憶へ静かにほどいていく。そこから四季の郷公園へ寄り道し、食べることと歩くことが近い場所で一度立ち止まった。やがて街へ出ると、和歌山城の石垣の影のそばに小さな動物園があり、歴史は固いものだけではないと気づく。県立博物館では、目の前の城が三万年の時間へつながり、影は午後の形ではなくなった。最後に紀州東照宮の石段を上る。下では木々が光を遮り、上では和歌の浦が光を返していた。眺めていたはずの影に、いつの間にか眺め返されていた気がする。

この旅の足跡

  1. 貴志駅の駅舎は猫の顔を思わせる意匠で、たまミュージアムのショップ&カフェは10時から16時まで。列車を待つ時間まで、屋根の輪郭が猫の耳のように見えてきた。
  2. 伊太祁曽神社は木の神・五十猛命を祀り、拝殿では木の俣くぐりもできる。境内に入ると、駅から続いていた生活の音が急に細くなり、木陰の奥が少し深く感じられた。
  3. 四季の郷公園 FOOD HUNTER PARKは農村の生態系を感じられる道の駅で、平日10時から17時、土日祝は9時から17時。木陰を抜けて食の気配に出ると、影が休憩の場所になる。
  4. 和歌山城公園動物園は城の敷地内にある珍しい無料の動物園で、開園は9時から17時。石垣の影のすぐそばで動物の気配が動き続ける、その取り合わせに少し驚いた。
  5. 和歌山県立博物館は原始から近現代まで和歌山の3万年を常設展で紹介し、9時30分から17時まで開館。城を見上げたあと展示室に入ると、石の影が時間の影へ変わった。
  6. 紀州東照宮へは急な石段を上り、朱の社殿の先に和歌の浦の海辺がひらける。登る前の濃い影と、上から返ってくる海の光が、今日の旅を静かに反転させた。
地図と足跡で読む