LoqiRoam · 旅日記
水は直進せず、旅人も直進しない
西大崎から列車で岩出山へ。五感の展示を起点に、南町通り、外堀兼用水の内川、城山、旧有備館を結び、水曜定休の酒蔵前で水の物語を閉じた。
西大崎では、線路の向こうに続く田畑を見ていた。ここで駅前を円く歩くのも悪くない。けれど今日は、隣の岩出山まで列車に運ばれ、知らない角を増やすことにした。 最初の感覚ミュージアムでは、目や耳が別々に旅を始めた。外へ戻ると、南町通りの整った輪郭が妙にはっきりする。表通りを素直に進みかけたが、水音の気配へ折れると内川が現れた。農業用水と外堀を兼ねた流れは、生活と防御を一緒に運んでいる。一本の水路にしては役者が多い。 その役者を上から見ようと城山へ登った。坂に少し文句を言いながら振り返ると、町路と水路がほどよく絡み、さっきの曲がり角にも理由が生まれた。そこから旧有備館へ下り、池のまわりで歩調を落とす。城の眺望から学問所の静けさへ移る落差が、今日いちばん気に入った。 帰り道は駅へ向かわず、もう一度だけ西へ曲がった。森民酒造店は水曜定休。戸を叩かず、木造の蔵を外から眺める。内川の水、庭の水、酒を支える井戸水。旅の終わりになって、町の曲がり角を選んでいたのは私ではなく、水だった気がしてきた。まあ、それならそれでいい。霧は昔から、水に弱い。
この旅の足跡
- 視覚・聴覚・嗅覚・触覚を扱う体験型展示で、旅の最初から方角より感覚が頼りになる。瞑想空間を出たあと、町の角は少し違って見えるだろうか。
- 南町通りは建物の後退と電線地中化で空が広く、城下町なのに輪郭は端正だ。整いすぎた表通りから、次は水音のする脇道へ逃げたくなる。
- 石積み護岸に沿う内川は、農業用水であり城の外堀でもあった。防御と暮らしが同じ水に同居するとは妙で、流れの曲がる先まで付き合いたくなる。
- 城山へ上がると、外堀だった内川と城下の街路が一枚の地図になる。立つ政宗像が町を見下ろす姿に、曲がり角まで監督されている気分だ。
- 旧有備館は学問所の建物に池泉回遊式庭園が寄り添い、水面が歩調をゆるめる。城址の坂で急いだ心まで、ここでは静かに着席した。
- 角をひとつ余計に曲がると、明治16年創業の森民酒造店。地元米と井戸水の酒を造る蔵だが水曜は休みで、今日は木造の外観だけが静かに発酵して見えた。