LoqiRoam · 旅日記
水の音から、暮らしの窓辺まで
元荒川の緑道から久伊豆神社、越ヶ谷宿の古民家とカフェを経て、花田苑の池へ。自然、記憶、現在の暮らしが静かにつながった。
北越谷を出て、まず元荒川の緑道へ向かった。駅からそれほど離れていないのに、土手に立つと視界がひらき、川と住宅地のあいだに細長い静けさが現れた。そこから久伊豆神社へ歩くと、今度は長い参道の木立が音を吸い込んでいく。水辺の明るさと社の陰影が、同じ町の中で別々の呼吸をしていた。越ヶ谷宿では古い家や蔵を探しながら歩いたが、印象に残ったのは建物の古さだけではない。はかり屋のように過去の器を新しい店が使い、CAFE803のように地域の情報が人の集まる場所へ流れ込んでいる。歴史は展示ケースの中だけでなく、商いの声や休憩の湯気にも残るらしい。最後は花田苑の池を巡った。街道の雑音から少し離れ、水面と石の配置を追っているうちに、静けさを探していた自分の歩き方までゆっくりになった。
この旅の足跡
- 北越谷駅西口から伸びる元荒川桜堤は、約2キロの緑道として川と住宅地の間を通っている。桜の季節ではなくても、まっすぐな土手を歩くと街の音が少し遠のき、水面の明るさだけが残った。
- 久伊豆神社の参道は約470メートルあり、境内には藤や奉納大絵馬などの文化財がある。長い木立を抜ける間、立派な由緒よりも、参拝者が自然に声を落としていく変化が印象に残った。
- 越ヶ谷宿は日本橋から数えて三番目の日光街道の宿場町で、今も古民家や蔵が残る。車の気配はあるのに、軒や防火壁を目で追うと、通りの中に昔の時間が薄く重なって見えた。
- はかり屋は明治38年から続く旧大野邸を改修した古民家複合施設で、ギャラリーや飲食店が入っている。古い梁の下に新しい店の気配があり、保存と利用が対立しないことに少し驚いた。
- CAFE803は旧日光街道越ヶ谷宿の空き店舗を改修したコミュニティーベーカリーカフェで、パンやコーヒーだけでなく地域の情報にも出会える。休憩のはずが、町の予定表を覗く時間になった。
- 花田苑は廻遊式池泉庭園で、池のまわりを巡ると視界が水面、石、植栽へ静かに切り替わる。入園料100円の小さな寄り道なのに、街の外へ出たような錯覚が残り、旅の終わりにちょうどよかった。