LoqiRoam · 旅日記

白壁から干潟まで

阿知須浦の白壁と港の記憶から、干拓地の鳥と河口の潮へ。町の密度がほどけるほど、光の変化が大きくなった。

阿知須駅を出ると、まず小さなカフェで歩く速度を落とした。そこから白壁の居蔵造が残る阿知須浦へ入り、廻船業の家に残る石の井戸やなまこ壁を見た。大きな港の記憶のあとで明栄寺の小さな阿弥陀如来を思い、町の時間が急に手のひらへ縮まった。道の駅では、かぼちゃやパンの色に土地の明るさを感じた。やがて干拓地へ出ると、道は広く、風の影が薄い。自然観察公園で渡り鳥のための水面を眺め、最後は土路石川河口の干潟へ向かった。潮の線は止まらず、空の色も少しずつ変わる。駅前から始まった散歩は、建物を読む旅から、水と光の移動を読む旅へ変わっていた。

この旅の足跡

  1. 駅から数分のカフェで、阿知須駅出口から徒歩約4分。静かに座れるという評判と、朝の光が差す窓の位置が気になった。
  2. 明治17年の旧中川家は、白壁の居蔵造と407個の石の防火用大井戸を残す。海水の生け簀だったという説明に、町の防火と港の暮らしが重なって見えた。
  3. 阿知須の明栄寺には、檜の一木造りで像高32.3センチの室町時代の阿弥陀如来立像が伝わる。小さな像に残る彩色の跡が、午後の薄明かりでどう見えるか想像した。
  4. 道の駅きららあじすは直売所が8時30分から18時まで開き、パンやもち、阿知須特産のかぼちゃ「くりまさる」も扱う。海風の中で、土地の色が食べ物に変わる。
  5. きらら浜自然観察公園は、渡り鳥が交差する30ヘクタールの環境を守り、双眼鏡や望遠鏡を無料で貸し出す。干拓地の直線に、鳥の曲線が現れるのを待った。
  6. きらら浜と土路石川河口には砂泥質から泥質の干潟が広がり、夏にはカブトガニの産卵も見られる。潮の線が少しずつ動き、空の白さまで変えていく。
  7. 土路石川は阿知須干拓地を流れて山口湾へ注ぐ。水面に残る夕方の光は、駅前の建物から始まった一日を海へ返すようで、歩いてきた距離が静かにほどけた。
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