LoqiRoam · 旅日記
水面と谷のあいだ
川渡温泉の河川敷から共同湯、こけし、ダム、潟沼、鳴子峡へ。水と谷に残る影の形をたどる旅。
川渡温泉を出ると、最初に見えたのは名所の看板ではなく、江合川のそばに広がる季節の余白だった。黄色い花の向こうで、山の影が川面にほどけている。そこから鳴子へ向かい、板張りの共同浴場で白濁した湯に身を沈める。外の明るさをいったん閉じたあと、日本こけし館で木の小さな表情を見た。旅はそこで縮まらず、鳴子ダムの大きなアーチへ急に開く。人が水を支える硬い影を見届け、潟沼では火山の酸性の水が雲を受けて色を変えるのを待った。最後は鳴子峡。大谷川の深い谷に落ちる木々の影を眺めていると、今日見てきたものはすべて、光そのものではなく、光が触れたあとに残る形だったのだと思えた。
この旅の足跡
- 江合川の河川敷に菜の花が広がると知って、温泉街の湯けむりとは別の黄色を探しに来た。川面の反射は山の影をどこまで運ぶのだろう。
- 千年の御神湯とされる滝の湯は、板張りの浴槽に白濁した湯が満ちる小さな共同浴場。外の光を忘れるほど、湯面の影が近かった。
- 日本こけし館では、鳴子こけしの首が動く仕組みと木の表情に目を奪われた。丸い影のひとつひとつに、作り手の呼吸が残っている。
- 鳴子ダムは高さ約100メートルのアーチ式コンクリート。山の曲線を受け止める巨大な影を前にすると、水を貯めることの重さが音なく迫ってきた。
- 潟沼は強い酸性で魚が棲まず、天候や季節で湖面の色が変わる。今日は青緑の水に雲の影が沈み、静かなのに少し怖かった。
- 鳴子峡の遊歩道から大谷川の深い谷を見下ろすと、木々の影が斜面を縫っていた。紅葉の名所なのに、夏の緑も十分に暗く美しい。