LoqiRoam · 旅日記
影の速度に合わせて
中川、古社、大イチョウ、菓子店、江戸川をつなぎ、影の濃淡を眺める小旅行。
吉川の出発点では、影は建物の足元に短く収まり、街の音もまだ近かった。中川左岸の堤防へ出ると、整備された土手道が空を押し広げ、草の影と水面の反射が、影を静止したものではなく動くものに変えた。芳川神社では1187年に再興された社の古さに触れ、木立の下で歩く速度が自然に落ちた。そこから密厳院の大イチョウへ向かうと、約30メートルの樹冠が落とす暗がりに、年月そのものが立っているようだった。香ばしい煎餅の店でひと息ついたあと、最後は江戸川沿いの吉川公園へ。街角で拾った細かな影は、水辺の広場で空と川にほどけていった。遠くへ逃げた一日ではなく、同じ午後の濃淡を、歩きながら少しずつ見直した旅だった。
この旅の足跡
- 中川左岸の堤防は、ただの土手ではなく、空を高く見せる細い展望台のようだった。草の影が斜面を流れ、遠くの橋だけが午後の光を硬く返している。
- 芳川神社は1187年に再興され、現在の拝殿は1850年のものだという。境内の木立に入ると、街の音が薄くなり、古い社殿の影だけが時間を抱えているように見えた。
- 密厳院の大イチョウは樹高約30メートル、根回り約12メートル。幹のそばに立つと、影は地面の模様ではなく、何百年分もの厚みを持った屋根のようだった。
- 栄町のまつざわ煎餅は、吉川の街角で菓子を焼き続ける小さな店として見つかった。香ばしい匂いの前では、さっきまで追っていた影さえ、ひと息つく理由に変わる。
- 吉川公園は江戸川右岸の河川敷にあり、水辺景観を生かした多目的な公園として整備されている。広場の影は小さく、最後には空と川の方が大きく残った。