LoqiRoam · 旅日記
海風の向きが変わるたび
鎌田の古い建物、塩田の道具、瀬戸大橋と美術館の海景、池とうどんをつないで坂出の産業と日常を味わった。
坂出に着いたときは、まず町の輪郭をつかもうと思っていた。けれど最初に心をつかまれたのは、観光地らしい大きな景色ではなく、大正時代の図書館建築を使う郷土博物館だった。古文書や絵図を眺め、塩田を築いた人の仕事を知ると、次に向かった塩業資料館の模型や道具が急に生々しく見えてくる。朝四時から始まった浜の仕事。その重さを想像したあとで海辺に立つと、風さえ少し働き者に感じられた。瀬戸大橋記念公園では、橋が海と島をつなぐ細い線に見え、隣の美術館では窓の外の光まで絵の続きをしていた。最後は池の水面で歩調を落とし、うどんの出汁で町の日常へ戻る。小さな発見を三つ集める旅のはずが、坂出の時間を丸ごと一枚持ち帰ることになった。
この旅の足跡
- 大正時代の図書館建築を使う鎌田共済会郷土博物館。約6万点の資料の中に、坂出の塩田を築いた久米通賢の記録がある。古い建物そのものが展示品みたいで驚いた。
- 坂出市塩業資料館では、古代の土器製塩から入浜式、流下式、イオン交換膜式までを模型や道具で追える。塩田の仕事が朝4時ごろから始まったと知り、海辺の景色の見え方が変わった。
- 瀬戸大橋記念公園では、橋の大きさより先に、海と島の間へ線を引くような構造の繊細さが目に入った。公園の開放感に立つと、坂出が港町から大きな交通の結節点へ変わった理由が少しわかる。
- 東山魁夷せとうち美術館は海辺にあり、作品の静かな色と窓の向こうの瀬戸内がゆっくり重なる。絵を見に来たのに、外の光まで展示の一部のように感じた。
- 鎌田池公園は水辺の桜並木で知られ、周辺に讃岐うどんの店も多い。工業と塩の町を歩いたあと、水面に映る木々を見ていると、坂出の呼吸が少しゆるむのを感じた。
- 坂出の讃岐うどんは、短い営業時間の店もあるほど日常のリズムに寄り添っている。つやのある麺と出汁を味わうと、今日見た塩や海が一杯の中でつながった気がした。