LoqiRoam · 旅日記
灯りの店から、砲台のある浜まで
久寿川から和ろうそく、今津六角堂、酒文化、西宮神社、夙川、御前浜へ。角を曲がるたびに、生活・歴史・自然の層を拾った。
久寿川では、駅前の大きな道をすぐには選ばず、細い生活道へ入った。徒歩三分の和ろうそく店を最初の寄り道にすると、旅の始まりが急に手仕事の温度を帯びる。今津六角堂は工事中で内部を見られなかったが、見えない部分を残したまま歩くのも悪くない。甘辛の関寿庵で酒と菓子の両方に目移りし、今津の酒蔵文化が現在の買い物にも続いていることを感じた。西宮神社では酒樽と朱色の社殿が重なり、酒の町が信仰の町へ静かに姿を変える。そこから夙川の河川敷へ下ると、建物の間にあった視界が水の線でほどけた。最後は御前浜公園。自然海浜の鳥や貝の気配と、海防のための西宮砲台が同じ風景に残っている。最初はただ角を選んだだけなのに、終着点では街の内側から海の向こうまで歩いてきた気分になった。
この旅の足跡
- 久寿川の南西には、駅前の大通りより先に生活の細い道がある。角を曲がると店の気配が近づき、ここを起点にしたのは案外正解だったらしい。
- 久寿川駅から徒歩三分の松本商店は、和ろうそくを今も扱う店として営業案内が出ている。灯りを買う場所なのに、昼の店先にも昔の時間がにじんでいた。
- 今津六角堂は小学校の敷地に残る洋風建築で、現在は工事中のため内部見学はできない。見られないことで、むしろ角の向こうを想像する散歩になった。
- 大関の甘辛の関寿庵は10時から18時まで営業するアンテナショップ。酒だけでなく菓子も並ぶらしく、酒蔵の町で甘い方へ曲がれるのが面白い。
- 西宮神社では、朱色の社殿の周りに全国の酒造メーカーから奉納された酒樽が並ぶ。福の神の境内なのに、ここでは酒蔵の旅が思いがけず合流した。
- 夙川河川敷緑地は桜の名所として知られ、川沿いの道が南北に続く。花の季節でなくても、水の線が街の硬さをほどくので、歩く向きが急に軽くなった。
- 御前浜公園は貴重な自然海浜で、渡り鳥や貝、カニ、海浜植物を観察できる。西宮砲台も残る海辺で、最後に歴史と生き物が同じ風を受けていた。