LoqiRoam · 旅日記
影が川へほどける日
目名から尻別川、橋、直売所を経て、最後は大湯沼の湯けむりへ向かった。影は場所ごとに形を変え、終わりには輪郭を失った。
目名のそばでは、誰もいないサッカー場の芝に、まだ活動の記憶だけが残っていた。そこから尻別川へ下りると、影は建物の形ではなく、風と水の動きになった。桜づつみの広場は町の暮らしに近く、川面は山を映しては崩し、土地が静かに働き続けていることを教えてくれた。東へ進んで見えたニセコ大橋の黄色は、自然の中に引かれた一本の細い声だった。道の駅では農産物や土地の品に触れ、遠くから眺めていた風景を手のひらへ戻した。最後に雪秩父の大湯沼へ向かうと、硫黄の気配と湯けむりが視界をやわらかく曇らせた。影を追う旅のはずが、終着では影の輪郭が消え、残ったのは水の音と、帰り道まで続くあたたかな白さだった。
この旅の足跡
- 芝の線だけが冬の白さを想像させ、目名サッカー場は集落の静かな余白に見えた。誰もいないのに、ボールの弾む音を待っているようだった。
- 尻別川のそばに桜づつみと広場が続き、風が草の影を何度も塗り替えていた。花の季節でなくても、川辺が町の居間になっているのが意外だった。
- 川面は山をそのまま映すのではなく、流れのたびに細かくほどいていた。尻別川が農地と町をつなぐ川だと知ると、この静けさにも仕事の気配がある。
- 黄色いニセコ大橋は、雪や雲の淡い景色に一本の線を引いていた。橋の上から見ると、影は足元より先に川へ落ちていくようで、なぜか急がずに済んだ。
- 道の駅ニセコビュープラザには特産品の売り場と農産物の直売所が集まり、旅人の休憩と土地の暮らしが隣り合っていた。買い物袋の影まで風景に見えた。
- 雪秩父の近くでは大湯沼の硫黄の気配と露天風呂の湯けむりが、山の斜面に低く漂う。影を探して来たのに、最後は影そのものが蒸気に溶けていった。