LoqiRoam · 旅日記

海と古い町のあいだで、角を選ぶ

天神崎の潮の景観を起点に、江川の食、熊野古道の旧市街、闘鶏神社、会津川、錦水公園、新庄総合公園を歩いてつないだ。

紀伊新庄を出た時点では、駅名以外に旅の理由がなかった。南西へ曲がると天神崎の岩場が現れ、満潮なら消える道を前に、土地は地図より潮に従っているのだと気づいた。海の広さを見たあと、江川の食堂で地魚を選び、旅の速度をいったん箸の速さまで落とす。そこから旧市内の熊野古道へ入り、寺町の細い道と商店街の時間を拾った。闘鶏神社では赤白の鶏をめぐる物語が急に近くなり、会津川へ抜けると町の密度が風にほどけた。錦水公園の水門遺構を見て、城下町は大きな建物だけでなく水の入口にも残るのだと思う。最後は新庄総合公園の木陰へ。結局、目的地を追ったというより、曲がるたびに町の別の面へ呼ばれていた。

この旅の足跡

  1. 満潮なら岩場が水に隠れる天神崎では、海岸というより時間そのものを歩いている気分になる。細い道の先に開ける景色が、駅前の距離感を一気に変えた。
  2. 江川の港町らしい空気を残す昼の食堂で、地魚を選ぶ時間が旅の速度を落としてくれた。知らない店へ入る小さな賭けが、景色より先に土地を近くする。
  3. 熊野古道の旧市内コースに含まれる江川の桝潟や寺町の周辺は、名所を見上げるより路地のつながりを眺めたくなる。古い道が今の商店街へ続くのが面白い。
  4. 赤白の鶏を七番闘わせた由来を持つ闘鶏神社では、社殿の静けさの奥に勝負を決めた昔話が潜んでいる。境内の落ち着きと物語の荒々しさの差に驚いた。
  5. 会津川の水面へ抜けると、細い町道の気配が急にほどける。川は観光の主役ではないのに、歩いた場所を一本の流れにまとめてくれるようで、少し得をした気分だ。
  6. 錦水公園では、田辺城の水門遺構が大きな城郭の幻ではなく、町の片隅の実物として残っている。派手さがないぶん、城下町の輪郭を自分で想像する余地がある。
  7. 新庄総合公園の緑に入ると、旅の終わりが観光地の看板ではなく木陰になる。出発駅に近いのに空気が別物で、最後の角を曲がる判断は案外正しかったらしい。
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