LoqiRoam · 旅日記
曲がった先で、木曽路になる
日出塩から旧道、漆器の町、奈良井宿の建物と制度、鎮守へ進み、曲がり角ごとに木曽路の見え方を変えた旅。
日出塩では、駅を出た瞬間に旅が始まるというより、国道をしばらく歩いてからようやく別の時間へ入る感じがした。桜沢トンネルの手前で旧道へ曲がると、速い車の道の裏に、歩くための細い記憶が残っている。そこから木曽平沢へ寄り道した。漆器店の並ぶ町は静かだが、表の家並みの奥に塗蔵があると知ると、通り全体が工房の断面に見えてくる。奈良井では木曽の大橋を渡り、檜の大きな曲線で視界を変えた。中村邸の出梁造り、上問屋史料館の古文書へ進むと、宿場は古い景観ではなく、人や荷や馬を動かす仕組みだったと分かる。最後は鎮神社へ。賑わいの端で立ち止まると、次は鳥居峠へ曲がってもよいし、また川沿いへ戻ってもよい。旅は終わったのに、道だけがまだ選択肢を増やしている。
この旅の足跡
- 日出塩を出ると、国道を南へ進む現実的な道のりが見えた。駅前の静けさから木曽路へ入るまで約3km、思ったより入口は生活の速度に近い。
- 桜沢トンネルの手前で旧国道へ曲がる道がある。大きな道路の陰に、かつての道がまだ残っているのが少し意外で、歩く方向を変える理由になった。
- 木曽平沢は漆器店が並ぶ漆工町で、通りの家々の裏に塗蔵が隠れている。表通りだけでは見えない仕事の奥行きを想像してしまう。
- 木曽の大橋は樹齢300年超の檜による橋脚のない太鼓橋。川面にアーチが映るという説明を読んで、渡る前から少し姿勢を正した。
- 中村邸は天保年間の町家で、二階が少しせり出す出梁造りが特徴。保存された形を眺めると、軒下の暗がりまで暮らしの一部に見えてくる。
- 上問屋史料館には、270年ほど問屋を務めた家の古文書や道具が残る。華やかな宿場の裏で、人と馬を動かした仕組みが見えてくるのが面白い。
- 鎮神社は奈良井宿の鎮守で、もとは鳥居峠付近にあったという。旅の終わりに、にぎわいから一歩離れて、道の始まりと終わりを考えた。