LoqiRoam · 旅日記

町の音から峡谷の水音へ

りんご並木から人形劇、城下町、美術と動物の気配を経て、天龍峡の水音へ向かう旅。

飯田の旅は、駅の近くから大きな名所へ急ぐのではなく、りんご並木の枝葉が揺れる道から始まった。中学生が植えた木々の並ぶ通りには、町の復興と日々の手入れが静かに重なっている。そこから川本喜八郎人形美術館へ入り、声を持たない人形たちの前で、物語が始まる直前の沈黙を味わった。赤門では、残った門の赤さが失われた城の輪郭をかえって濃くし、美術博物館では春草の絵と伊那谷の自然が、同じ土地を別の角度から見せてくれた。小さな動物園でペンギンやカモシカの気配に出会ったあと、飯田線で天龍峡へ向かった。最後に聞こえたのは、橋を渡る人の足音より深い、天竜川の流れだった。町の音を拾い集めていたはずが、終わりにはその音たちを水が遠くへ運んでくれたように思う。

この旅の足跡

  1. りんご並木は、昭和28年に中学生が植えた木々が復興の道に並ぶ場所。車の音より枝葉の気配が近く、町の記憶を歩いているようで少し不思議だった。
  2. 川本喜八郎人形美術館では展示全体の写真撮影が可能になっている。静止した人形なのに、照明の下では今にも声が出そうで、物語の始まる前の沈黙に耳を澄ました。
  3. 飯田城桜丸御門、通称赤門は宝暦4年の建築で、飯田城で唯一ほぼ当初位置に残る門。赤い柱の前に立つと、失われた城の大きさを逆に想像してしまう。
  4. 飯田市美術博物館は美術・自然・人文の三部門を持ち、菱田春草の作品や伊那谷の自然を紹介する。展示室の静けさが、さっきまでの町のざわめきを別の速度に変えた。
  5. 飯田市立動物園は入園無料で、中心市街地の中にある小さな動物園。ペンギンやカモシカの気配が思いがけず近く、町歩きの終わりに呼吸がほどけていった。
  6. 天龍峡は天竜川の侵食がつくった南北約2キロの峡谷で、遊歩道を8の字に歩ける。最後に水音と橋の高さが現れ、町で拾った音が遠くへほどけていった。
地図と足跡で読む