LoqiRoam · 旅日記
賑わいの脇に残る静けさの層
石手寺から湯築城跡、道後温泉、伊佐爾波神社、空の散歩道を経て萬翠荘へ。信仰、温泉、城跡、近代建築の隣り合う静けさをたどった。
柳原を出て、最初に石手寺の山門をくぐった。参道には人の流れがあるのに、マントラ洞窟の石の奥へ入ると音が遠のき、旅の焦点が定まった。道後公園では、堀と土塁に囲まれた湯築城跡を歩いた。芝生の公園として親しまれている場所に武家屋敷の痕跡が残り、観光地の足元に別の時間が沈んでいる。道後温泉本館では、保存修理を終えて全館営業に戻った木造建築を眺めた。古いものを眺めるだけでなく、使い続けることで歴史が現在形になることが印象に残った。伊佐爾波神社の135段を上ると、朱色の社殿の前で街の音が薄れた。最後は空の散歩道から温泉街を見下ろし、路面電車で中心部へ戻って萬翠荘を訪ねた。寺社や温泉とは違う白い洋館の静けさに触れ、松山の気配は一枚ではなく、歩く速度を変えるたびに重なって見えるのだと感じた。
この旅の足跡
- 石手寺の山門をくぐると、参道の人の気配の奥にマントラ洞窟がある。石の冷たさと暗がりに立つと、札所は歩く人の数より沈黙の深さで記憶に残るのだと思った。
- 道後公園の湯築城跡には、堀や土塁、武家屋敷跡が残り、丘の展望台から松山平野を見渡せる。観光地の中心なのに、足元の地形が急に中世へ戻す感じがした。
- 道後温泉本館は2024年7月に全館営業を再開し、明治期の木造三階建が今も公衆浴場として使われている。新しく直された部分より、使い続ける姿勢に心が動いた。
- 伊佐爾波神社へ続く135段の石段を上ると、朱色の社殿と八幡造の回廊が現れる。商店街の音が背後へ薄れ、豪華な建築なのに気持ちは静まっていくのが不思議だった。
- 空の散歩道は道後温泉本館の南側にある24時間の展望遊歩道で、温泉街を見渡せる。神社の石段を下りたあと、足湯の気配と街の灯りを同じ高さで眺められた。
- 萬翠荘は松山市中心部に残る国指定重要文化財の洋館で、現在も9時から18時まで公開されている。道後の木造建築を見たあとでは、白い外壁が町の記憶の別の層に見えた。