LoqiRoam · 旅日記
商いの町から、鈴の鳴る余白へ
木綿、豪商の屋敷、武家屋敷、城跡、鈴屋を曲がり角でつないだ松阪の町歩き。
松阪駅を出て、最初から目的地を正面に置かず、本町の角で少し迷った。そこで見つけた木綿の手仕事が、松阪を豪商の名前だけで覚えないための入口になった。魚町では旧長谷川家の土間と庭に商家の大きさを感じ、旧小津清左衛門家では通りに面した町家の奥行きを想像した。商人の町を歩いたつもりが、石畳と槇垣の御城番屋敷に出ると、武士の暮らしがすぐ隣に現れた。松坂城跡へ上がると屋根の連なりがほどけ、歩いてきた道がひとつの地図になった。最後は本居宣長旧宅の鈴屋へ。見えない鈴の音を想像しながら、賑わいより静けさの方を持ち帰った。
この旅の足跡
- 本町の角を曲がると、松阪もめんの手織りを伝える場所があった。木綿の町が資料ではなく手の動きとして見えるのが、少し意外だった。
- 魚町の旧長谷川家は、江戸店持ち商家の広い屋敷と庭を残している。土間から庭へ視線が抜けると、商売の規模より暮らしの細部が気になった。
- 旧小津清左衛門家は本町2195番地に残る松阪屈指の豪商の本宅。町家の奥行きを想像しながら歩くと、表通りの静けさまで展示の一部に見えてきた。
- 松坂城跡は市街地の標高約38メートルの独立丘陵にある。石垣の上で振り返ると、さっきまでの商家の屋根が町の記憶を束ねているようで、急に景色が広がった。
- 御城番屋敷は石畳の両側を槇垣が囲み、松坂城を守った武士と家族の組屋敷だった。豪商の町から数分で景色が変わるのが、松阪らしい小さな驚きだ。
- 本居宣長旧宅の書斎は鈴屋と呼ばれ、36個の小鈴を掛けていたという。城跡近くの静かな一角で、旅の最後に耳で想像する場所が現れた。