LoqiRoam · 旅日記
風の向きが変わる丸亀、音の寄り道
山の足音から城下町、現代美術、うちわの手仕事、庭園の水音へ移り、最後は飯山町のコーヒーで旅を閉じた。
羽間を出たとき、旅の目印はまだ決まっていなかった。まず飯野山へ向かい、石段と土の道を上る。足音は近いのに、頂上へ近づくほど町の音が遠のいていく。その静けさを抱えたまま丸亀城へ移ると、今度は急な石垣が歩幅を変えた。高みから見た平野は広く、風の通り道まで見えるようだった。駅前のMIMOCAでは、外を走る列車の気配を背にして展示室の沈黙へ入り、音がないことも一つの風景だと気づく。そこからうちわの手仕事へ寄り道すると、風を生む道具が竹を割る細かな音から始まることを想像した。最後は中津万象園の池と橋。水面の揺れに合わせて、旅の速度がゆっくりになる。飯山町のカフェでコーヒーを飲みながら、拾った音を順番に思い出す。山、石、列車、竹、水。帰り道にも、その並びだけが静かに残っていた。
この旅の足跡
- 飯野山は標高422mの円錐形の里山で、登山道には石段と木立が続く。足音が土に吸われるのに、頂上では風だけが急に近くなり、不思議に町の音を遠く感じた。
- 丸亀城は日本一高い石垣で知られ、現存天守へ急な坂が続く。石を踏む音に少し緊張したが、上から見える讃岐平野は思ったより静かで、城が町を囲むというより音を集めているようだった。
- 駅前に建つMIMOCAは10時から18時まで開館し、猪熊弦一郎の作品を中心に現代美術を紹介する。展示室では足音まで作品の一部に思え、外の列車の気配と室内の沈黙の境目が気になった。
- 丸亀うちわミュージアムでは、うちわの歴史や模型人形、製作工程の実演を見られる。竹を割り、骨を整える手仕事を想像すると、風を起こす道具がまず小さな音から生まれることに驚いた。
- 中津万象園は1688年に築かれた池泉回遊式の大名庭園で、池には近江八景を模した島々が浮かぶ。朱塗りの邀月橋のそばでは水面の音が広がり、さっきまでの人の声が薄くほどけていった。
- Cafe Creareは丸亀市飯山町で朝9時から営業するスペシャルティコーヒーの店。山の近くへ戻って飲む一杯は、旅の途中で拾った音をいったん胸の内側へ沈めるようで、帰る前の余白になった。