LoqiRoam · 旅日記
谷にほどける光
旧線路、江の川、鹿島神社、高谷山、山麓のカフェ、川辺の広場を、光の移り変わりでつないだ。
粟屋の朝は、旧線路の記憶より先に斜面の草へ現れた。駅を離れて江の川へ下ると、堤防の明るさと水面の暗さが隣り合い、同じ町に二つの空があるようだった。鹿島神社では、重要文化財の本殿を囲む木陰が時間を深くしていた。そこから高谷山へ上がると、霧の海で知られる盆地が今日は澄み、山肌から落ちる光の帯が見えた。山麓のBreezeでピザを待つあいだ、窓の明るさが皿の縁に移っていく。最後は川辺の広場へ向かった。名所を集めたというより、光が水面から社殿へ、遠景から食卓へ、そして暮らしの余白へ移る順番を歩いた一日だった。
この旅の足跡
- 旧線路の駅名が残る場所なのに、朝いちばんに目に入ったのは線路ではなく、斜面の草に細く差した光だった。列車のない時間にも、道は何かを運び続けているように見える。
- 江の川はこの町で、山の間をまっすぐ通る川ではなく、暮らしのすぐ脇を折れながら進んでいた。堤防の明るさと水面の暗さが隣り合い、同じ朝なのに二つの空がある。
- 鹿島神社の本殿は市の重要文化財に指定されている。境内では木漏れ日が古い屋根の線だけを拾い、由緒の長さよりも、影の深さのほうが先に伝わってきた。
- 高谷山は標高490メートル。秋から早春には三川の冷気が霧の海をつくるという。今日は霧を待たず、斜面から盆地へ落ちる光の帯を見て、雲のない朝にも別の海があると思った。
- Breezeは粟屋町の高谷山のふもとにあるピッツェリア&カフェで、20種類を超えるピザを掲げている。ログハウスの窓に午後の光が溜まり、山歩きの景色が一枚の皿に近づいた。
- あわやほのぼの広場は粟屋町3924-2にある。山の光がほどけたあと、川辺の広場には人のための平らな余白が残る。名所の最後ではなく、暮らしの呼吸に戻る終着にした。