LoqiRoam · 旅日記

影の輪郭を追う秩父の午後

秩父の湧水、社寺、石畳、祭礼展示、丘、橋、温泉をつなぎ、場所ごとに異なる影の形を眺めた。

西武秩父を出ると、駅前の光は輪郭が強く、少しだけよそよそしかった。そこで最初に今宮神社へ向かい、龍神池の水面と大きなケヤキの下に沈む影を覗いた。秩父神社では、彩色された虎や鎖につながれた龍の彫刻に近づき、古い物語が木の奥でまだ息をしているように感じた。番場通りの石畳では、軒下の暗がりが建物の表情を柔らかくし、歩く速度まで変えていく。秩父まつり会館で笠鉾と屋台を見上げると、動かない展示の向こうから祭り囃子を想像してしまった。そこから羊山公園へ出て、花だけでなく丘の斜面と武甲山の稜線が受け渡す影を眺める。秩父公園橋では橋の影と荒川の反射が別々に揺れ、最後は祭の湯でその揺れを身体の内側へ沈めた。影は光の欠落ではなく、場所が記憶を留めるための余白だった。

この旅の足跡

  1. 今宮神社の龍神池は武甲山の伏流水が湧く秩父最古の泉で、千年以上とされるケヤキも立つ。水面の暗さを覗くと、木の影まで息をしているようだった。
  2. 秩父神社の社殿には、子虎と戯れる「子宝 子育ての虎」や鎖につながれた龍の彫刻が残る。華やかな彩色の中で、龍の影だけがまだ動きそうに見えた。
  3. 番場通りは秩父神社へ続く石畳の参道で、大正モダンを思わせる建物や商店が残る。軒下の影に立つと、街が古い映画の一場面へ沈んだ。
  4. 秩父まつり会館は笠鉾や屋台を間近に展示し、映像と音で夜祭を再現する。動かない山車を前にしたのに、暗い館内から囃子が聞こえた気がした。
  5. 羊山公園は武甲山を望む丘陵の公園で、芝桜の丘としても知られる。花の季節でなくても、斜面を長く滑る影と山の稜線が景色を支えていた。
  6. 秩父公園橋は荒川を渡る長さ530メートルの斜張橋で、主塔の下では鳴き龍現象も体験できる。橋の影と川の反射が別々に揺れていた。
  7. 祭の湯では地下約2000メートルから汲み上げた天然温泉に浸かり、露天から武甲山の山影を眺められる。旅の最後に、外で追った影が湯の中へほどけた。
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