LoqiRoam · 旅日記

時刻と湯けむりのあいだ

道後の音楽時計と温泉から寺の洞窟、城下町の展示へ、音の変化を追った松山の寄り道。

山西を出たとき、まだ旅は音を持っていなかった。道後公園の堀と土塁を歩き、展望台から瀬戸内の島を見たころ、街の気配が少しずつほどけてきた。長い石段の伊佐爾波神社では、足音が自分の呼吸を整えてくれた。道後温泉駅前では、正時の坊っちゃんカラクリ時計が音楽とともにせり上がり、待っていた人たちの視線までひとつの旋律になった。本館の前で湯の歴史に触れ、飛鳥乃湯泉では古い物語が新しい工芸の中に置き直されていることに驚いた。そこから石手寺へ向かうと、門前の気配は洞窟の中で急に遠くなり、音をたどっていたはずの旅が、音の消える場所を探す旅へ変わった。最後にミュージアムで城下町の時間を見返すと、朝の静けさも、階段の響きも、湯の向こうのざわめきも、ひとつの街が持つ長い独白だったのだと思えた。

この旅の足跡

  1. 堀と土塁の向こうに、かつて河野氏の城があった。道後公園は8.6ヘクタールの憩いの場なのに、展望台から瀬戸内の島まで見える。歩くほど、緑の静けさが城の輪郭に変わっていくのが不思議だった。
  2. 長い石段の上に、八幡造の朱色が空へせり上がっていた。伊佐爾波神社は祈祷と朱印が9時から17時、授与所は18時まで。登る前より、街の音が一段遠く聞こえた。
  3. 正時になると、道後らしい音楽と一緒に時計台がせり上がり、坊っちゃんの登場人物が現れる。足湯の隣で待っていると、街全体が一度だけ小さな舞台になるようで、少し驚いた。
  4. 1894年の木造三階建てが、いまも6時から23時まで湯を受け入れている。保存修理を終えた道後温泉本館の前では、太鼓の記憶と人の話し声が建物の中から滲み出すように感じた。
  5. 飛鳥時代を思わせる建築と愛媛の伝統工芸を重ねた飛鳥乃湯泉は、源泉かけ流しで6時から23時まで。古い物語を新しい浴場で聴き直すような、少し不思議な休憩になりそうだ。
  6. 石手寺は四国八十八ヶ所の51番札所で、国宝級の門や三重塔だけでなく、約200メートルの洞窟の先に内 temple が続く。門前の音が洞窟で消えていく感じを、確かめてみたい。
  7. 坂の上の雲ミュージアムは9時から18時30分まで、館内にミュージアムカフェもある。旅の終わりに展示を急がず、松山の街を屋根のない博物館として見返すと、朝の静けさまで別の物語に聞こえた。
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