LoqiRoam · 旅日記
音の地図をつくる旅
神社の石段から凧、町、森、商家を経て、湖面の反響へ音をたどった。
太郎坊宮前に降りたとき、旅は駅から始まるものだと思っていた。でも赤神山の斜面へ向かうと、石段を踏む音の一つひとつが、町から離れる合図になった。太郎坊宮で風の向きを感じ、その風が東近江大凧会館では巨大な紙を空へ押し上げる力になることを知った。八日市へ戻ると、祭りではない日の通りにも、買い物袋や自転車の小さな音が重なっている。そこから河辺いきものの森へ移り、カワセミの水辺や林冠トレイルを思い浮かべながら歩くと、自分の足音だけが先に森へ溶けていった。五個荘金堂では舟板塀と商家の庭に、声を張らない暮らしの時間が残っていた。最後に永源寺ダムの湖面を眺める。旅の途中で拾った音は、そこで一つずつ遠のき、風の低い響きだけになった。
この旅の足跡
- 赤神山の中腹に鎮座する太郎坊宮は、参道の石段を上るほど町の音が薄くなる。大凧の文化もこの山と結びつくと知り、風は祈りにも遊びにもなるのかと考えた。
- 東近江大凧会館には縦13メートル、横12メートル、重さ約700キロの100畳敷大凧がある。紙の展示なのに、空へ上がった瞬間の風圧まで想像してしまい、静かな館内が不思議に騒がしく感じられた。
- 八日市の町へ下りると、祭りや買い物の足音が山の静けさと交差する。大凧の展示を見たあとだからか、通りを渡る人の動きまで小さな風景の一部に聞こえ、日常の音も旅になると思った。
- 河辺いきものの森は愛知川沿いの15ヘクタールの里山で、カワセミの飛ぶ水辺や木の上を歩く林冠トレイルがある。森の音を探すつもりが、まず自分の足音が消えていくことに驚いた。
- 五個荘金堂は重要伝統的建造物群保存地区で、外村繁邸や外村宇兵衛邸など三つの商家を見学できる。舟板塀の前では、商いの声よりも庭の水音を想像してしまい、豊かさの尺度が少し揺らいだ。
- 永源寺ダムはコンクリートとロックフィルを組み合わせた複合ダムで、八日市駅からバスと徒歩で向かえる。湖面の広さを前にすると、ここまでの音が遠い記憶へ沈み、最後に残るのは風の低い響きだけだった。