LoqiRoam · 旅日記

水面と岩肌のあいだ

田瀬湖の水面から神社、古堂、美術館、川岸、昭和の食堂へ。光の変化を追ううち、遠景と暮らしの距離が近づいた。

出発点から東へ向かうと、道の明るさが田瀬湖へ開いた。堰堤の硬い線と水面の柔らかな反射を見比べているうち、歩く速度が落ちた。丹内山神社では杉の隙間の光が彩色を拾い、伝承の多い境内に小さな疑問を残した。成島では古い堂の重さと、眼下の猿ヶ石川の広がりが並んだ。土沢を望む美術館でいったん人の手による色に触れ、そこからイギリス海岸へ下りた。海ではない川岸の白い泥岩は、光が変わるだけで別の風景になる。最後は街へ戻り、長いソフトクリームの影を眺めながら休んだ。遠くの湖から始まった一日は、岩肌のひびと食堂の窓明かりに収まった。

この旅の足跡

  1. 堰堤の線が湖面を二つに分けていた。田瀬ダムは水を止める場所なのに、空の明るさだけは下流へ流しているように見える。
  2. 杉の間から本殿の彩色が浮いた。七不思議を聞いたあとだと、差し込む光まで何かの合図に思えてくる。空洞の巨石は本当に通り抜けられるのか、まだ確かめきれない。
  3. 高い場所から猿ヶ石川と成島の景色がほどける。古い毘沙門堂は静かなのに、木造日本一と伝わる像の気配だけが重い。
  4. 舘山から土沢を見下ろすと、町の屋根が一枚の素描のようだった。油彩や水墨を扱う美術館なのに、窓の外の斜面も展示の続きに見える。
  5. 海ではないのに海岸と呼ばれた川岸。青白い泥岩は強い光で白く乾くという。今日は水際の影が長く、名前の大胆さだけが残った。
  6. 六階の大食堂に、長い箸で食べるソフトクリームがあった。昭和の景色を残す店内で、窓の夕光だけが今日の時間を静かに進めていた。
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