LoqiRoam · 旅日記

水の町で、赤い道を外れる

藤森の古社から伏見稲荷、名水、酒蔵、寺田屋、古いカフェへ。水を手がかりに、町の層を歩いた。

JR藤森を出た時点では、近くの名所を順番に撫でるつもりはなかった。まず藤森神社で、伏見城の石垣と地下水の話に足を止める。そこから伏見稲荷へ向かい、赤い鳥居の連なりを見上げたが、気になったのはむしろ木陰の濃さだった。御香宮神社では水の由来と極彩色の建物が同じ境内にあり、伏見の水が信仰だけでなく酒造りへ続いていることが見えてくる。月桂冠大倉記念館で米と時間の気配を受け取り、寺田屋では水辺の町に幕末の緊張が重なった。最後は伏見夢百衆の古い窓辺で、仕込み水の水出しコーヒーと甘味の気配を想像しながら休む。大きく迷ったわけではない。ただ、曲がるたびに旅の理由が少しずつ変わった。

この旅の足跡

  1. 藤森神社の境内には伏見城取壊しの際の城壁の一部とされる石垣が残り、地下約100メートルから湧く「不二の水」もある。古社なのに、水の説明が妙に現在形だった。
  2. 伏見稲荷の千本鳥居は、江戸時代から奉納の信仰で形づくられてきたという。赤が続くほど単調になるかと思ったら、木陰の奥で色が急に深くなり、歩く速度が落ちた。
  3. 御香宮神社では、862年に湧いた香りのよい水が社名の由来になり、極彩色の桃山建築も境内に残る。水は静かなのに、建物の装飾だけが華やかにこちらを見返した。
  4. 月桂冠大倉記念館は伏見の酒造りと酒文化を紹介し、現在の案内では9時30分から16時30分まで見学できる。水の話が、ここで米と時間の話に変わった。
  5. 寺田屋は坂本龍馬が逗留した旅籠として伏見の水辺に残る。酒蔵の柳並木を歩いてから軒先を見ると、観光地の明るさに幕末の緊張が薄く重なって見えた。
  6. 伏見夢百衆は大正期の旧本店建物を使い、きき酒だけでなく仕込み水の水出しコーヒーや甘味も出している。最後に酒ではなく水出しを選ぶと、旅の輪郭が少し静かになった。
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