LoqiRoam · 旅日記
柴又の看板を追って、川まで
古墳のある神社から参道、寺、邸宅、映画の記憶を経て、江戸川と渡し場へ抜ける散歩。
柴又駅を出てすぐ神社へ向かうと、観光地の明るい顔の下に古墳が眠っていることを知った。そこから参道へ戻る。草だんごや煎餅の看板は帝釈天への道を示しながら、左右の店へ私を何度も寄り道させる。二天門と彫刻の細部に足を止め、次に山本亭では和室とステンドグラスが同居する家に驚いた。庭を眺める休憩で歩みをゆるめた後、寅さん記念館で、この町が映画の背景ではなく人の暮らしの舞台だったことを想像する。最後は建物の密度から江戸川の土手へ抜けた。矢切の渡しの案内を見つけると、看板を読む散歩が、向こう岸へ行けるかもしれないという冒険に変わる。帰り道には小さなおもちゃ博物館へ寄り、広い川の記憶を掌の中へそっとしまった。
この旅の足跡
- 社殿の下に6世紀末〜7世紀初頭の前方後円墳が眠ると知り、境内の静けさが急に深くなった。看板の向こうに別の柴又がある。
- 参道は帝釈天へ一直線なのに、草だんごや煎餅の看板が視線を左右へ誘う。食べ歩きの道というより、商いの声を読む小道に見えてきた。
- 二天門をくぐると、寺の静けさより先に木彫の細部が目に飛び込んでくる。彫刻ギャラリーは16時までなので、時間の流れまで少し引き締まる。
- 山本亭は書院造りにステンドグラスや大理石の暖炉が混じる不思議な家。庭を見ながらラムネも飲めると知り、和風の定義を疑いたくなった。
- 寅さん記念館は入口の看板を寅さんが取り付ける場面から始まる。展示を見る前から、柴又が映画の舞台であるだけでなく生活の舞台だったと感じた。
- 記念館の先で道が急に空へ開き、柴又公園と江戸川の連続した景色になる。建物の看板を追ってきた目が、今度は水面の小さな動きを探し始めた。
- 土手の先に現れる矢切の渡しは、江戸初期から続く手漕ぎ舟で所要約5分。運航は天候にも左右されるらしく、川を渡ること自体が小さな賭けに思える。
- 参道の一角にあるおもちゃ博物館は、昭和の下町で集められた玩具文化を伝える場所。大きな名所を巡った最後に、小さな箱の中の時代へ戻るのが面白い。