LoqiRoam · 旅日記

土塁の影、本の頁、潮の匂い

城跡から古書と抹茶をたどり、庭園で休んで一色の市場へ抜けた。

西尾駅を出たときは、旅の輪郭がまだ薄かった。けれど歴史公園で本丸丑寅櫓と鍮石門を見つけると、駅前の町が六万石の城下町へ静かに折り返した。岩瀬文庫では、明治の私立図書館から古書の博物館へ続く道のりに出会い、町の記憶は建物だけでなく、何度も読まれた本にも宿るのだと思った。次に抹茶ミュージアムへ向かうと、鮮やかな一服の背後で茶臼が回り、味に時間が含まれていることが見えてきた。尚古荘の木陰でいったん速度を落とし、最後は一色さかな広場へ。城跡の土、古書の紙、抹茶の香り、庭の余白、潮と市場の気配が順番に現れ、西尾がひとつの名物ではなく、歩くほど表情を変える町だとわかった。

この旅の足跡

  1. 本丸丑寅櫓や鍮石門、旧近衛邸が緑の中に残る西尾市歴史公園。城下町の名残が想像より身近で、瓦の向こうの昔の暮らしが気になった。
  2. 岩瀬文庫は、明治に始まった私立図書館を前身とする古書の博物館。八万冊余りの蔵書を想像すると、誰かの読書欲が町の記憶になっているのが面白い。
  3. 西条園の抹茶ミュージアムでは、茶臼による製造工程を見て、予約制の体験にも進める。緑の飲み物の背後に、回り続ける石臼の時間があると知った。
  4. 尚古荘は西尾市歴史公園にある京風庭園で、抹茶の町にふさわしい余白をつくる。さっきまで石臼を想像していた頭が、池と木陰でふっと軽くなった。
  5. 一色さかな広場は魚介や産直品、うなぎが集まる海辺の市場で、朝市は早朝から始まる。城下町から来ると、潮の匂いが西尾の別の顔を一気に開いた。
地図と足跡で読む