LoqiRoam · 旅日記

影の行方、谷中から夕暮れへ

三河島から谷中の高台、寺町、よみせ通り、上野桜木、上野公園を経て不忍池へ。生活の軒影から水面の反射まで、街の明暗を歩いた。

三河島を出たとき、今日はただ光の届かない場所を探すつもりだった。けれど夕やけだんだんへ近づくと、影は暗がりではなく、階段の段差や商店の軒先に生まれる街の輪郭として現れた。観音寺の築地塀では土と瓦の凹凸が時代を重ね、寺町の細い路地では人の声が遠のく速度まで見えてくる。よみせ通りで匂いに引かれて立ち止まり、上野桜木あたりでは古い住まいが今の手仕事を受け止めていることに驚いた。上野公園で影の幅が大きく変わったあと、不忍池へ下りる。三つの池に分かれた水面は空と木々を静かに返し、昼の影まで淡くほどいていた。歩いた距離より、明るさの質が何度も変わったことが、今日の旅を残した。

この旅の足跡

  1. 夕やけだんだんは谷中銀座を見下ろす階段で、手すりの影が段差に沿っていた。名の通りの夕景は、まだ昼なのに少しだけ予告されていた。
  2. 観音寺の築地塀は土と瓦を交互に積んだ約37.6メートルの壁。人通りが途切れると、古い技法の凹凸だけが濃い影をつくっていた。
  3. 谷中の寺町には狭い路地、寺社、低い住宅が残り、塀と樹木が道を細く区切る。観光地の近くなのに、影が暮らしの時間を守っているようだった。
  4. よみせ通りは和食器や雑貨、イタリアン、甘味処が並ぶ商店街。軒の影に店の明かりが重なり、歩く旅には匂いの休憩も必要だと気づいた。
  5. 上野桜木あたりは昭和の住まいの風情を生かした場所で、店主が交代で店番をする。古い木の軒下に新しい営みがあり、保存が息苦しくないことに驚いた。
  6. 東京都美術館のある上野公園では、レンガ色の建物と大きな木が長い影をつくる。展示室に入らずとも、園路の明暗だけで歩く線が変わった。
  7. 不忍池は鵜の池、蓮池、ボート池の三つに分かれる天然池。水面が空と木の影を返し、追ってきた暗がりが最後には光の模様になった。
地図と足跡で読む