LoqiRoam · 旅日記

水の町で、三つ拾う

藤森の名水、疏水の発電、伏見の酒と舟運をつなぎ、町の役割が変わりながら残る姿を見つけた。

JR藤森駅を出ると、まず藤森神社の境内で足がゆるんだ。馬の神事や古い武具で知られる場所なのに、いちばん気になったのは「二つとない良水」と呼ばれる不二の水だった。そこから疏水へ向かうと、今度は墨染発電所。住宅の向こうに、水の落差を電力へ変えた大正の仕組みが隠れている。ひとつ目の発見は、水が祈りになること。二つ目は、水が町を動かすこと。伏見桃山では大手筋商店街の買い物客に混ざり、酒蔵の気配へ歩いた。月桂冠大倉記念館では、古い蔵と約400点の道具が、酒を「味」だけでなく手順の記憶に戻してくれた。長建寺の八臂弁財天には思わず立ち止まる。小さな堂に八本の腕、発見は大きさでは測れない。最後は伏見港公園。復元された三十石舟を眺めながら、港がスポーツの公園へ姿を変えた時間を想像した。三つ目の発見は、町は消えるのではなく、役割を変えて残ること。水の細い流れから始まり、酒と信仰と舟の記憶を拾って、今日は静かに終わった。

この旅の足跡

  1. 藤森神社はJR藤森駅から徒歩5分、9時から17時に参拝できる。馬の神事で知られるのに、境内の不二の水が「二つとない良水」という名なのが面白い。
  2. 墨染発電所は1914年運転開始の水路式発電所で、疏水の落差を使ってきた。住宅地のそばに大正の電力史が潜んでいるとは、歩いてみないと気づかなそう。
  3. 伏見桃山の大手筋商店街は約400メートル続き、スーパーや飲食店、老舗の和菓子店が並ぶ。酒蔵の町なのに、まず日常の買い物風景が迎えるのが新鮮。
  4. 月桂冠大倉記念館は1909年の酒蔵を改造した建物で、約400点の酒造道具を展示する。試飲だけでなく、道具の多さから手仕事の重さが想像できる。
  5. 長建寺は中書島の弁天さんとして親しまれ、京都で唯一の八臂弁財天を本尊とする。小さなお寺なのに八本の腕という意外性があり、旅の景色が急に濃くなる。
  6. 伏見港公園はかつての伏見港の舟溜りを埋め立てた場所で、復元された三十石舟が置かれている。水運の終点が今はスポーツの公園という変化に、町の長い呼吸を感じる。
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