LoqiRoam · 旅日記

川へ下り、塔と石と舟を拾う

栗山配水塔から庚申塔、文学碑、渡し舟、柳原水閘、宝蔵院へ。景色と歴史の層を拾う矢切の小さな発見旅。

矢切駅を出ると、まず栗山配水塔の丸い屋根が目に入った。昭和の水道施設なのに、遠くから見ると町の小さな灯台のようで、旅の目印がいきなり見つかった気分になる。そこから細い道を歩くと、1668年銘の庚申塔が道端に残っていた。大きな案内板のない石像に、土地の時間が凝縮されている。高台の西蓮寺では『野菊の墓』の文学碑と、江戸川の向こうまで開けた眺めに出会った。物語の悲しさより先に、畑と空の明るさが来たのが意外だった。川へ下り、矢切の渡しの運航時間を確かめながら、手漕ぎの舟を待つ。最後は坂川沿いの柳原水閘で、舟を支えていた水の仕組みを知り、宝蔵院の静かな境内へ戻った。塔、石、眺め、舟、煉瓦、木陰。三つだけのつもりが、歩くたびに小さな発見が増えていった。

この旅の足跡

  1. 丸い屋根の塔が駅から見えるというので探したら、昭和12年の配水塔だった。高さ32メートルなのに、町の風景には不思議と柔らかく収まっている。
  2. 道端の石像群の中央に、1668年銘の青面金剛庚申塔が立つ。大きな観光地ではないのに、戦の記憶と平和祈願が同じ角に残るのが気になった。
  3. 西蓮寺の高台にある小さな文学碑から、江戸川と柴又まで見渡せる。悲恋の舞台を想像していたのに、最初に届いたのは広い空と畑の明るさだった。
  4. 矢切の渡しは10時から16時、荒天なら休み。手漕ぎの舟が本当に川を横切るのか、対岸の柴又を見ながら少し待つ時間まで旅になった。
  5. 坂川の合流部に、1904年の煉瓦造り四連アーチの柳原水閘が残る。いまは稼働していないのに、水の逆流を止めた役目が形から伝わってきた。
  6. 宝蔵院には本尊のほか不動明王や地蔵、観音が祀られ、松戸七福神の大黒天もいる。大きな銀杏の木を目印に、発見を静かに数え直した。
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