LoqiRoam · 旅日記
影が水から町へ移る日
上桑名川の谷から西大滝ダム、戸狩と野沢の温泉文化、飯山の寺町と雁木通りへ。影の姿が自然から暮らしへ移る旅。
上桑名川を出ると、旅は名所を集めるより、斜面と線路と川のあいだで明るさが変わる場所を探す時間になった。西大滝ダムでは、急流を受け止める白い堤体が水面を細かく分けていた。そこから戸狩温泉へ移り、露天の湯に山の影が落ちる時間を想像する。野沢温泉の麻釜では、90度を超える湯が山菜や野菜をゆでる台所になっていて、温泉が暮らしの内部にあることに驚いた。終盤は飯山の寺町へ戻り、寺と寺を結ぶ道をゆっくり歩く。最後の雁木通りでは、雪よけの屋根がつくる暗がりが、雪のない季節にも冬の記憶を抱えていた。追っていた影は、自然から建物へ、そして人の手へ移っていた。
この旅の足跡
- 上桑名川を出ると、線路と千曲川が谷の底で同じ方向へ沈んでいく。斜面の影だけが先に濃くなり、まだ何も始まっていないのに帰り道まで見えた気がした。
- 西大滝ダムは高さ14メートル、堤頂長114メートルの重力式コンクリートダム。浅瀬の急流を受け止める白い線が、水面の静けさを細かく割っていた。
- 戸狩温泉の暁の湯は弱アルカリ性の源泉を加水なしで使い、露天風呂もある。夕方の山影を眺めてから湯に沈む順番が、今日はちょうどよさそうだ。
- 麻釜では90度以上の湯が五つの湯だまりをつくり、山菜や野菜をゆでる台所として今も使われている。湯けむりで家々の輪郭がぼやけるほど、暮らしが近く感じられた。
- 飯山の寺町には寺院をつなぐ寺めぐり遊歩道が整備されている。大きな名所を急いで巡るより、塀と樹木の間に落ちる影を一つずつ拾う終盤に向いていた。
- 愛宕町雁木通りは約300メートル続く雪よけの屋根の道で、仏壇店が軒を連ねるため仏壇通りとも呼ばれる。屋根の下の暗がりが、雪のない日にも冬を残していた。