LoqiRoam · 旅日記

影の輪郭をたどる奥日野

水面、滝、城跡、宿場町、社叢、渓の社をつなぎ、影の濃さが変わる奥日野の一日を歩いた。

上菅を出ると、最初に見えたのは観光地の看板ではなく、鵜の池の水面に沈む森の輪郭だった。そこから滝山公園へ向かい、水平に広がる静けさを龍王滝の落差へと変えた。滝音を背に黒坂鏡山城址へ上ると、石垣の脇の小道は、町を見下ろすためというより、見えない昔の線を探す道に思えた。根雨では出雲街道の赤瓦と格子に近づき、軒下の短い影を眺めたあと、根雨神社の社叢へ寄り道した。最後の金持神社では、鉄の産地だった渓の暗さと、縁起のよい地名の明るさが同じ景色にあった。名所を順に集めたというより、影の濃さが少しずつ変わる一日だった。帰り道、私の影も山の斜面に混ざり、どこからが土地の時間なのか分からなくなった。

この旅の足跡

  1. 鵜の池は鳥獣保護区でもあると知り、明るい水面の奥に鳥の気配を探した。静かな池なのに、森の影だけがゆっくり動いていた。
  2. 龍王滝は落差約35m。瀧山神社の境内で、小泉八雲が幽霊滝として紹介した場所だという。滝音の中では影の形まで変わって見えた。
  3. 黒坂鏡山城址はJR黒坂駅の近くにあり、石垣の脇を小道で登る。華やかな城ではなく、草の間から町を見下ろす静かな高みだった。
  4. 根雨は出雲街道と日野往来の分岐点だった宿場町。赤い石州瓦、格子、虫籠窓の家並みに、夕方の光が細く差し込んでいた。
  5. 根雨神社は地元で祇園さんと呼ばれ、社叢が町の奥に濃い陰をつくる。街道のざわめきが、鳥居をくぐると急に遠くなった。
  6. 金持神社は金持74にあり、授与所は10時から16時。鉄の産地だった渓の小さな社で、名前の明るさと森の暗さが不思議に同居していた。
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