LoqiRoam · 旅日記
水音から杉の風まで
油津の運河から飫肥城下町、四半的、厚焼き玉子、城跡、杉と苔の森へ。音の変化に導かれた日南の旅。
福島高松を出るとき、行き先はまだ決めなかった。ただ、日南線の先には海と山の音が重なる場所がある気がして、まず油津の堀川運河へ向かった。飫肥杉を運んだ水路の静けさを聞いたあと、列車で飫肥へ移る。石垣と格子の町を歩き、四半的の矢が空気を切る短い音に足を止めた。厚焼き玉子の甘さで旅はいったん人の温度に戻り、飫肥城では木立のざわめきが歴史の説明を包んだ。最後に旧本丸跡の杉と苔の中へ入ると、遠くの音がほどけていく。名所を集めた一日ではなく、耳が次の寄り道を選んでいった旅だった。
この旅の足跡
- 堀川運河は飫肥杉を油津港へ運ぶためにつくられた水路。静かな水面なのに、木材と港町の往来がまだ底に響いている気がした。
- 飫肥城下町には苔むした石垣や武家屋敷、商人町の格子が残る。角を曲がるたび足音の反響が変わり、町の古さを耳で確かめた。
- 四半的射場では、弓も的までの距離も小さく整えられている。矢が放たれる一瞬の音に、飫肥藩の遊びが今も身体で残っていると感じた。
- 飫肥の厚焼き玉子は、卵をじっくり焼く名物で、プリンのような口当たりと紹介されている。甘さの余韻が町歩きの速度を変えた。
- 飫肥城は大手門や石垣、松尾の丸などが残る城跡。復元と史跡が混じる場所で、説明を読む声より木立のざわめきが長く残った。
- 旧本丸跡は樹齢約140年の杉木立と苔のじゅうたんが広がる「癒しの森」。風が枝を渡る音だけになり、旅の終わりが静かに見えた。