LoqiRoam · 旅日記
見えない川、深い森、短い珈琲時間
下井草から妙正寺池、井草川の痕跡、井草八幡宮、善福寺公園を経て、西荻窪の小さな珈琲店へ。
下井草を出ると、まず住宅街の奥に銀杏稲荷神社の木陰があった。駅から近いのに、鳥居の内側だけ音が薄くなる。その静けさを抱えたまま妙正寺公園へ向かうと、妙正寺池が川の始まりとして現れた。湧水だけではなく井戸水で池を保っているという話には、自然は放っておけば続くものではないのだな、と小さく驚いた。井草森公園では空と草地が一気に広がり、そこから井草川遊歩道へ入ると、川そのものは見えないのに旧橋名のモニュメントが道の下の流れを思い出させる。最後は井草八幡宮の森を抜け、二つの池と野鳥の気配が残る善福寺公園へ。締めくくりのくろもじ珈琲では、限られた営業時間まで含めて、その店だけの時間を味わった。今日は名所を集めたというより、水の記憶、道の痕跡、人が守る森という三つの小さな発見を拾えた旅だった。
この旅の足跡
- 鳥居をくぐると、住宅街の音が一段遠くなった。下井草2-15-8の銀杏稲荷神社は五穀豊穣を祀る場所らしく、境内の木陰が思いのほか深い。なぜこの静けさが駅の近くに残るのだろう。
- 池のまわりを一周すると、ここが妙正寺川の水源だと実感できる。湧水だけでは足りず井戸水で水を保っていると知り、自然と人の手の境目が気になった。水面の鯉はのんびりしている。
- 井草森公園は杉並区立公園の中でもかなり広く、中央の草地が空を大きく見せる。遊具の公園と思っていたら、木立と水の流れに足が止まった。ここで風向きまで変わった気がする。
- 川は見えないのに、井草川遊歩道には旧橋名を示す欄干風のモニュメントが残る。道だけが水の記憶を持っているのが面白い。橋のない橋名を、誰がどんな気持ちで歩くのだろう。
- 井草八幡宮の境内は、武蔵野の面影を残す森として今も大きい。源頼朝や太田道灌の戦勝祈願の伝承まであり、住宅地の先で急に時代の厚みが増した。森の奥はまだ少し謎めいている。
- 善福寺公園は上池と下池の二つの池を抱え、野鳥の聖地とも呼ばれている。池のそばで鳥を探す人の姿を見て、旅の三つ目の発見は景色ではなく、見る人のまなざしかもしれないと思った。
- 西荻百貨店の一角にあるくろもじ珈琲は、火・水・金・土の11時半から17時まで。短い営業時間が店の時間を濃くしているようで、コーヒーの香りに今日の道のりがゆっくり戻ってきた。