LoqiRoam · 旅日記
森から濠へ、色ガラスの影へ
古社の森、巨大古墳、行基ゆかりの寺、浜寺の松林を経て、海の記憶を映す駅舎へ向かった。
富木を出ると、駅前の生活道はすぐに古い地名の層へ沈んだ。等乃伎神社では住宅の隙間に森があり、細い影がまだ道の形を覚えているようだった。大鳥大社では木立が一気に深くなり、根上がりの楠の下で時間の尺度が変わった。そこから履中天皇陵古墳へ向かうと、濠の向こうの墳丘は近づくほど遠くなる。家原寺では、行基の誕生を伝える境内と、願いのハンカチがつくる白い揺らぎに立ち止まった。午後は浜寺公園へ出て、約四千本のクロマツの影を風にほどき、最後に諏訪ノ森駅旧駅舎へ移動した。五枚のステンドグラスに閉じ込められた海岸の風景は、夕方の光を受けると建物の内側へ別の海を落とす。今日眺めたのは、影そのものというより、土地が記憶を隠しながら残す輪郭だった。
この旅の足跡
- 富木の名を残す等乃伎神社は、式内社とされる古社。住宅の間に森が沈み、鳥居の影だけが道へ長く伸びていた。
- 大鳥大社の森は一万五千坪。鬱蒼とした木立の奥に大鳥造の社殿があり、樹齢六百年超の根上がりの楠が、午後の光を複雑に割っていた。
- 履中天皇陵古墳は全長約365メートル、日本で三番目の大きさ。濠の向こうの斜面は近づくほど遠くなり、影が墳丘の段差を隠していた。
- 家原寺には文殊堂、誕生塚、三重塔などが点在し、本堂は祈願のハンカチで白く見える。風に揺れる布の影が、古い境内を今の時間へ戻していた。
- 浜寺公園には約4000本のクロマツが広がり、ばら庭園は日本庭園風。松の細い影と水路の反射が、同じ緑でも別の濃さを作っていた。
- 諏訪ノ森駅旧駅舎は1919年築の木造平屋で、入口上の五枚のステンドグラスに浜寺から淡路島への海岸風景が描かれる。夕方、色ガラスの影を見届けたい。