LoqiRoam · 旅日記
影の濃淡を歩く
信濃町から四谷、外苑、新宿御苑へ。社寺、並木、壁画、木造の庇、庭園、珈琲をつなぎ、影の形が変わる一日を歩いた。
信濃町を出ると、まず須賀神社へ向かった。階段の上の社殿と、下で行き止まる道のあいだに、街の生活と祈りが薄い影のように重なっていた。そこから明治神宮外苑へ抜けると、銀杏並木は季節を越えて視線を遠くへ運ぶ道になった。並木の先の聖徳記念絵画館では、80枚の壁画が歴史を年代順に並べている。明るい出来事を描く画面より、展示室の奥に沈む陰影に惹かれた。国立競技場では、木の庇の影が巨大な建築を細かく分解していた。最後に新宿御苑へ入り、庭園の曲線と高層ビルの境目を眺める。四谷の珈琲店で歩みを止めると、今日見た影は消えるものではなく、場所の記憶を留める薄い重りだったのだと思った。
この旅の足跡
- 車道から少し入ると、須賀神社は四谷の鎮守として江戸初期からそこにいる。階段の上の社殿へ差す光と、下で行き止まる道の気配が対照的だった。
- まっすぐ伸びる銀杏並木は、季節が違っても樹冠の隙間から空を切り取る。聖徳記念絵画館へ向かう視線が、道そのものを長い影の装置にしていた。
- 聖徳記念絵画館には、明治の出来事を時系列で描く80枚の壁画があり、日本画40枚と洋画40枚に分かれる。大理石の広間では、歴史の明るさより額縁の奥の暗がりが気になった。
- 国立競技場は47都道府県の木材を軒庇に用い、観客席は森の木漏れ日を思わせる5色で構成される。巨大な器なのに、庇の下では影が細かくほどけていた。
- 新宿御苑は風景式庭園、日本庭園、整形式庭園がひとつの園内に重なる。中の池を望む場所では、木々の影が高層ビルの輪郭をやわらげ、東京の騒がしさだけが遠くなった。
- 四八珈琲は四谷三丁目と新宿御苑の間にある、ひとりでも入りやすい喫茶店として紹介されている。歩き終えて固めのプリンとコーヒーを思うと、影の旅にも小さな重りができた。