LoqiRoam · 旅日記

曲がり角の先は、湯か、木か、火山か

温泉街の古湯から工芸、火山湖、渓谷へ、道の気配に任せて進んだ。

鳴子御殿湯のそばで歩き始めたときは、川沿いの空気が旅の主役になると思っていた。けれど最初の曲がり角で滝の湯へ入り、白濁した湯と板張りの浴槽に身を沈めると、道は水の記憶を探すものに変わった。温泉神社で源泉を奉納する習わしを知り、栗だんごでひと息つく。甘さのあとに日本こけし館へ向かうと、ろくろの音と木屑の匂いが、湯治の町に手仕事の背骨を通していた。そこから少し気まぐれに山へ振り、魚のいない潟沼の酸っぱい水面に出会う。最後は鳴子峡へ。深い谷と清流のそばを歩いているうち、観光地を順に消化する感覚が消えた。今回は名所を集めたのではなく、湯、甘味、木、火山、谷が交代で現れる道を歩いたのだと思う。戻るころには、曲がり角を選ぶこと自体が小さな旅になっていた。

この旅の足跡

  1. 板張りの浴槽に白濁した湯が揺れていた。千年の御神湯なのに、入口は驚くほど小さく、湯けむりの向こうの曲がり角が気になる。
  2. 神社の境内に温泉の記憶が沈んでいる。二柱の神へ源泉を奉納する習わしを知ると、街の湯けむりが急に生き物らしく見えてきた。
  3. 栗が丸ごと入った名物の栗だんごは、歩き疲れを甘く黙らせる。店先で待つ時間まで旅の一部に思えて、次の道を少し迷った。
  4. 木地師の手元で、ろくろの回転が丸い形を連れてくる。展示品の数にも圧倒されたが、削り屑の匂いのほうが鳴子らしく残った。
  5. 魚のいない強酸性の潟沼は、静かなのに少し危うい色をしていた。火山が約1200年前に残した水面を見て、道を曲がる癖が大げさに思える。
  6. 鳴子峡の大深沢遊歩道は一周2.2キロ。深い谷を眺めるだけのつもりが、足元の道の幅と清流の音に誘われ、予定より先まで歩いてしまった。
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