LoqiRoam · 旅日記
明るい山で、影のほうへ
大谷川から神橋、渓流、御用邸、湖、滝へ。日光の明るい景色を、そこに生まれる影の変化としてたどった。
大谷向を出たとき、旅の手がかりは駅のまわりにまだ薄く散っていた。大谷川へ出ると、山から下ってきた水は市街地で穏やかになり、岸の木々の影だけが流れに合わせて揺れていた。神橋では朱色の反橋が急流の上に浮かび、次に訪れた憾満ヶ淵では、地蔵の列と渓流の音が景色の奥行きを変えた。田母沢御用邸の長い軒下では、自然とは違う、人の暮らしが残した影を眺めた。そこからバスで山を上がると、町の細かな陰影は中禅寺湖に映る大きな山影へ姿を変えた。最後の華厳ノ滝では、白い水と暗い岩壁が互いを際立たせていた。見えたものを集めたというより、明るさが何かを隠すたび、その隠れた輪郭を追いかけた午後だった。
この旅の足跡
- 大谷川は中禅寺湖を起点に山から流れ下り、日光市内では穏やかな表情になる。水面の明るさより、岸の木々が落とす細い影のほうが先に目に残った。
- 神橋は大谷川の急流に架かる朱色の反橋で、橋の鮮やかさが川底の暗さを際立たせている。渡る前から、光と影の境目に立たされる感じがした。
- 憾満ヶ淵では、渓流の音が不動明王の真言のように響くと伝えられる。並び地蔵の数が行き帰りで違うという話を思い出すと、木陰まで少し人の記憶を帯びて見えた。
- 田母沢御用邸記念公園は近代和風宮殿の建物と庭が重なり、長い軒が夏の光を静かに分けている。部屋の奥へ伸びる影を見ると、避暑の時間まで保存されているようだった。
- 中禅寺湖の岸では、遠い山の影が水面でゆっくり崩れていた。天気を確かめてから向かったのに、予報よりも雲の動きのほうが旅の表情を決めていた。
- 華厳ノ滝は落ちる水の白さが強いぶん、周囲の岩壁の暗さが輪郭になる。轟音に包まれているのに、影の境界だけは不思議なくらい静かだった。