LoqiRoam · 旅日記

海風は、焼き物の町を横切る

片上の湾辺から伊部の窯元と神社へ、曲がり角ごとに土と暮らしのつながりを拾った旅。

備前片上を出たとき、行き先はまだ決めなかった。駅前から西片上の道へ入り、湾の気配が家並みの隙間から現れるたびに、少しだけ進路を変えた。図書館で町の時間を落ち着かせてから、赤穂線で伊部へ向かう。伊部では、窯元やギャラリーが点在する通りを歩いた。備前焼は千年以上続き、登り窯の煙突や店先の器が、通りの景色そのものになっている。伝統産業会館では、駅舎まで登り窯の形をしていることに驚いた。目的地へ着いたというより、駅を出た瞬間から町の文化に包まれていたらしい。さらに曲がって天津神社へ上がると、狛犬や屋根瓦にも備前焼が使われていた。焼き物は店の中だけではなく、信仰や坂道の輪郭にまで入り込んでいる。帰りは同じ角を戻らず、片上側の図書館へ戻った。海と煙突と本の静けさが一つにつながり、寄り道の多い一日がようやく形になった。

この旅の足跡

  1. 駅から西へ歩くと、湾の気配と古い生活道が近い。観光地の入口というより、暮らしの途中に迷い込んだ感じがした。角を曲がるたび、海が少しだけ見える。
  2. 備前市立図書館は市民センターの3階にあり、開館は9時30分から18時まで。外の道の音をいったん本の背表紙へ預けると、旅が地図から記憶に変わった。
  3. 伊部は千年以上続く備前焼の里。窯元や工房、ギャラリーが点在し、登り窯の煙突が旧山陽道の先に見える。派手ではないのに、通り全体が土の色で締まっていた。
  4. 備前焼伝統産業会館はJR伊部駅舎を含む登り窯形の建物で、2階に作家や窯元の作品が並ぶ。器を見る前から、駅そのものが焼き物の入口になっていた。
  5. 伊部の細い通りを曲がると、窯元とギャラリーが急に現れる。器は整然と並ぶのに、焼け色は一つずつ違う。道も作品も、偶然を隠さないところが面白い。
  6. 天津神社では、狛犬や参道、屋根瓦にも備前焼が使われている。窯の町を歩いていたはずが、いつの間にか信仰の風景まで土と火でつながっていた。坂を上がった甲斐がある。
  7. 帰りに図書館へ戻ると、片上の海と伊部の煙突が頭の中で同じ風景になった。知らない町では、静かな公共施設がいちばん正直な終着点かもしれない。
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