LoqiRoam · 旅日記

看板の向きに導かれて、周参見から江住へ

周参見の食堂と歴史を起点に、案内板を頼りに江住の海・道の駅・水族館へつなぐ散歩。

周参見駅を出ると、最初に旅を動かしたのは大きな名所ではなく、食堂の看板だった。カツオやイノブタの文字に誘われて町の味へ入り、そこから資料館でケンケン漁の船模型や移住の記憶に触れる。現在の食卓から過去の海へ、歩く方向が一度深くなる。観光案内所では熊野古道やすさみ八景の案内が、海辺だけを見ていた視線を山側へ向けた。そこで旅は徒歩の町歩きから、江住へ向かう小さな移動へ転じる。道の駅すさみでは空と海と江須崎を一望し、直後にエビとカニの水族館で殻や脚の細部へ視線を落とした。最後は海岸側で潮の音を聞く。看板が増やしてくれた物語を、説明のない水平線が静かにほどいてくれた。

この旅の足跡

  1. 駅を出てすぐ、すさみ食堂の文字が目に入る。カツオやイノブタを掲げる店なのに、入口は町の生活にすっと馴染んでいて、旅人向けの看板というより近所の昼食の合図に見えた。
  2. 坂の先の資料館には、ケンケン漁の船模型や潜水服、上ミ山古墳の出土品がある。海の町だと思って歩き始めたのに、展示は海の向こうへ移った人々の話まで連れてきて、地図が急に厚くなった。
  3. 観光案内所の前では、熊野古道やすさみ八景の文字が、海だけを見ていた私の視線を山側へも向けた。小さな案内板ほど情報を詰め込みすぎず、次の道を自分で選ばせるのが面白い。
  4. 江住へ移ると、道の駅すさみの看板は食事だけでなく、空と海、江須崎まで一枚に抱えていた。周参見の細い町路から来たので、視界の広さそのものが驚きになり、道が旅の主役へ変わった。
  5. エビとカニの水族館は、名前からして対象を絞り込んでいる。その潔さに惹かれて入ると、海で見上げる大きな景色とは逆向きに、脚や殻の細部へ視線が沈んでいく。海辺の散歩に小さな観察窓ができた。
  6. 最後に海側へ出ると、観光施設の看板より潮の音のほうがはっきりする。江住の海岸線は、立派な説明を足さなくても岩と水平線が問いを残し、次はどの小道から海へ降りられるのか気になった。
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