LoqiRoam · 旅日記

水の音が山へ戻る日

山川の砂むしから西大山駅、長崎鼻、池田湖、唐船峡を経て、枚聞神社の森で開聞岳を仰いだ。

大山駅を出ると、まず山川の海岸へ向かった。砂むしの熱は観光の説明よりも直接的で、波音を聞きながら体の下から温められると、土地の火山性が急に身近になる。そこから西大山駅へ戻る道では、黄色いポストの小ささに足が止まった。最南端という言葉より、誰かの願いを受け取り続ける無人の静けさが残った。長崎鼻では灯台と龍宮神社、東シナ海の風に開かれ、旅の向きが海から内陸へ変わった。池田湖では大うなぎとイッシーの伝説を思いながら水面を眺め、唐船峡ではその水がそうめんを冷やしていることを舌で確かめた。最後に枚聞神社の森へ入ると、開聞岳は景色ではなく、長く祀られてきた存在として見えた。熱、郵便、潮、湖、水、森。派手な移動ではないのに、音の変化が一日を静かに編んでくれた。

この旅の足跡

  1. 海岸の砂に横たわると、温泉の熱が下からゆっくり押し上がる。10〜15分で汗が出るという説明を思い出し、海の音まで体の内側に響く気がした。
  2. 小さな無人駅に黄色いポストだけが鮮やかに立っている。日本最南端という肩書きより、誰かが願いを投函して去る時間の静けさのほうが印象に残った。
  3. 長崎鼻では白い灯台の向こうに東シナ海が広がり、近くの龍宮神社には海の伝説が重なる。観光地なのに、風が強い日は人の声がすぐ薄まっていく。
  4. 池田湖は九州最大のカルデラ湖で、湖畔には大うなぎとイッシーの伝説が残る。水面を見ていると、怪獣の話が冗談ではなく、静かな湖底の想像力に見えてくる。
  5. 唐船峡では平成の名水百選に選ばれた湧水でそうめんを流す。水温13度ほどの冷たさが器だけでなく、周囲の木陰の空気まで変えているようだった。
  6. 枚聞神社は開聞岳を背負うように森の中に鎮まり、旅の最後に音が急に少なくなる。山を眺めるだけだった一日が、山を祀る場所で静かに閉じた。
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