LoqiRoam · 旅日記
川を見失うたびに
町の食卓から川、古道、温泉、展望へ。見失うたびに景色が変わった。
粕淵に着いて、最初から名所へ急ぐ気分ではなかった。産直みさと市で町の食べ物を眺め、買い物袋を持つ人の流れに少し混ざる。そこから江の川へ向かうと、山に挟まれた水面が思ったより大きく、道の雰囲気が変わった。カヌーの里おおちは営業日を確かめてから、今日は水辺の静けさを拾うだけにする。次の曲がり角では、やなしお道へ。約七キロの銀山街道に茶屋屋敷跡や一里塚が残ると知ると、舗装の下にも昔の足音があるように思えてくる。山道のあと、湯抱温泉へ下った。中村旅館の日帰り入浴は予約が必要なので、湯気を想像しながら建物の気配だけを味わう。最後は田之原展望台で江の川の蛇行を見下ろした。晴れていれば三瓶山、霧が流れれば両国おろし。帰り道には川が見えたり隠れたりしたが、その不確かさがいちばん旅らしかった。
この旅の足跡
- 粕渕92-13の産直みさと市は、町の食卓がそのまま店先に出ている感じ。何を買うか迷う時間まで、旅の始まりらしい。
- 江の川の水面が山の間で急に広がる。カヌーの里おおちは9時から16時、火水休みで、今日は水辺を眺めるだけでも十分楽しそうだ。
- やなしお道は約7キロ、標高280メートルの山中を通る銀山街道。茶屋屋敷跡や一里塚が残ると知り、曲がり角の先を少し信用したくなった。
- 大正5年創業の中村旅館は、湯抱温泉の低温の源泉を薪で沸かす。浴槽が千枚田のように見えるらしく、湯の花の形を確かめたくなる。
- 田之原展望台は車で上がれ、駐車場から徒歩約3分。江の川と山々を見渡し、条件が合えば三瓶山や『両国おろし』の雲海まで見える。
- 粕渕へ戻る道の途中、江の川は見えたり隠れたりする。霧が町へ流れ込む『両国おろし』の話を思い出し、見えない景色も悪くないと思った。