LoqiRoam · 旅日記

水音のほうへ曲がる

王子の社寺と水辺、名主の滝、飛鳥山の博物館、都電沿線、十条銀座をつなぎ、歴史から生活の匂いへ移る旅。

栄町を出て、まず王子神社へ向かった。熊野信仰を起点にした神社の境内には大イチョウや関神社があり、駅前の時間とは違う古さが街の中に残っている。そこから音無親水公園へ下りると、車の音の隙間に水面が現れた。水の気配をもう少し追いたくなり、名主の滝公園へ寄り道する。斜面の木々と滝を使った回遊式庭園は、住宅地の奥にひそむ小さな地形の劇場だった。飛鳥山公園では、桜の名所という入口から紙の博物館や渋沢史料館へ話が広がり、丘の上で街の産業史を拾った。そこで旅を終えるつもりが、都電に乗りたくなった。梶原銀座商店街で線路と店先の近さを眺め、最後は十条銀座へ移動する。約180軒の店が集まる通りでは、焼き鳥や惣菜の匂いが理屈を追い越した。今日は名所を集めたというより、水音から食卓まで、曲がるたびに街の温度を測った一日だった。

この旅の足跡

  1. 王子神社は熊野信仰から生まれ、境内には大イチョウや関神社が残る。大きな社殿より、街中に古い信仰の層がそのまま挟まっている感じがして、最初の曲がり角にちょうどよかった。
  2. 音無親水公園では、王子の市街地を流れていた石神井川の記憶が、水路と木陰に残っている。さっきまで車の音を追っていたのに、数歩で水面を覗いている自分が少し可笑しい。
  3. 名主の滝公園は斜面と木々を使った回遊式庭園で、複数の滝が住宅地の奥に隠れている。整備工事で茶室が変わったと知り、庭は静止画ではなく更新されるものだと思った。
  4. 飛鳥山公園は吉宗の時代から桜の名所として知られ、今は紙・地域史・渋沢栄一の博物館が同じ丘に集まる。花見の丘だと思って来たら、紙の歴史まで待っていたのが意外だった。
  5. 梶原銀座商店街は都電荒川線のすぐ脇にあり、都電の形をした和菓子まで売っている。線路と店先が近すぎて、電車が街を通るというより街の会話に一両だけ混ざる感じがした。
  6. 十条銀座商店街には約180軒の店や食堂が集まり、焼き鳥やポークかつなど惣菜の匂いが通りを押してくる。最後の目的地を名所にしなかったら、歩いた分だけ胃袋が正直になった。
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